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「なぁこれって俺とってたか?」
「フレッド、自分の受けてた授業も忘れたのか?」
「俺はジョージだ、タイリー」
「それは悪かった」
変な気分がした。自分の部屋に、フレッド達がいるんだ。簡易机の上に教科書を広げて、ペンを進める(ヒヨリ様の机の上にあったボールペンを、アンジー達が気に入って使っている)。
「そういえばフレッド、ジョージ、君たちエジプト行くんだって?」
リーが、教科書にのめり込みそうになっていた顔を上げてそう言った。その言葉を聞いたフレッドたちの表情は、それはそれはもう明るい以上のものだった。そしてそれを見た俺の予感は当たることになる。あぁ、きっと勉強の集中はこれで終わりだ、ってね。
「あぁ、パパが懸賞金を当ててね!!」
「1週間後に行ってくるんだ。お土産を楽しみにしててくれよ」
「変なもの買ってこないでちょうだいね」
「なんだいアンジー、変なものって例えば墓とかかい?」
「最低ね、ジョージ」
「ひどいぜアリシア、今のはフレッドだ」
日本でも双子節は健在のようだ。お嬢様が笑いながらそんな5人を見つめていた。
「そういえばヒヨリ」
「なーに、アンジー」
「その服、とても素敵ね...」
「それ私も思ってたわ、それが日本の伝統服?」
「確か、KIMONO、かしら?」
もう誰も勉強をする気は無いらしい。俺は肩をすくめてペンを置く。アンジーとアリシアに挟まれたお嬢様も、ペンを机の上に転がして、正座していた足を伸ばした。
「うん。アンジーたちも着てみたい?たくさんあるし貸してあげるよ」
「いいの...!?」
「嬉しいわ、ありがとうヒヨリ...!!」
服に着目するのは、さすが女子といったところか。フレッドたちなんて、畳や屏風、障子などを見て盛り上がっていたというのに(これが草か!?と叫んでいたフレッドにお腹を抱えて笑っていたお嬢様を思い出した)。
「この色も素敵な色ね...」
アリシアがそっと指を伸ばしてお嬢様のお召し物の袖に触れる。淡い紫色のその着物は、彼女が次期当主であることを意味する着物だ。
「日本には、位に合わせて色を決める風習があってね。この紫は、当主であることを意味してるんだよ」
「へー...紫が最高の色なのか?」
リーが興味深そうな声を出して、お嬢様の着物を見つめる。
「そうだよ。でも、魔法処のローブはなんか違ったよ。ね、タイリー」
「えぇ。成績優秀者は最終的に金色になる」
「金!!」
「すげーな!!君たちは金かい?」
フレッドとジョージがお互いに顔を見合わせて、キラキラと輝く瞳でこっちを見た。その姿に俺とお嬢様も顔を見合わせて苦笑をこぼす。
「さすがにそれはないな」
「うん。私たち11歳で中退してるし」
そう言えば、5人は納得といった形で首を縦に振った。
当時通っていたローブは今どこにあるのかわからないけれど、記憶にあるのは、俺もお嬢様も金色でないことだけは確かだった。
「今年はふくろう試験があるわけだけど、どう?二人は12科目、行けそうなの?」
雑談をしすぎた、とばかりにアンジーが首を横に振りながら教科書を開く。その言葉に、俺もお嬢様も顔を見合わせて、ゆっくりと笑みを浮かべる。
「問題ない」
「今のところはね」
そう、それぞれが一言言えば、俺たちの5人の親友は、明るい笑顔を見せてくれたのだ。
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