27

部屋に戻った後アンジーとアリシアにこっぴどく怒られたのは想像に難くないだろう。それはもうこってりと。せっかくの打ち上げだったのに、申し訳ないと私も思っていたから、私は正座をしながら二人の説教を聞いていた。
それでも、二人が少し心配そうな顔をしながら私を見た後に、無事でよかったと言いながら頬を撫でた。

気づかなかったけど、少し傷があったようで。二人が、私の傷にそっと触れながら心配をしてくれていたことに気づいて、また心の底から申し訳ない気持ちでいっぱいになった。




次の日の朝、私とタイリーはダンブルドア先生の部屋に呼ばれて、裁判について話し合った。そこには、牢屋から出されたシリウスさんとハリーがいて、私とタイリーの姿を確認すると走りより、私の両手を強く握りしめたのだ。

「...君が...全部証明してくれたんだな...!?」

血走った目でそう言われると怖いものがあったけれど、それでも私は笑みを浮かべて、コクリと首を縦に振った。

その時のシリウスさんの表情は、表現しがたいものだった。

「...ありがとう...この恩はきっと...きっと返す...!!」

そう、男の涙を流しながら言うシリウスさんをハリーはとても優しい笑顔を浮かべながら眺めていた。

「一つ聞きたいのですが」

私は、シリウスさんから手を離して口を開く。その言葉に席に座っていたダンブルドア先生が「何かのぅ?」と答えた。

「シリウスさんの無実が証明されれば、ハリーはこの方と一緒に住めたりはしますか?」
「私はハリーの名付け親だ。今も変わらずそうだから、後見人にはなれるし、実はその...もうそのことについては話していた」

シリウスさんは、子供のようなキラキラとした笑顔を浮かべながら、ハリーの頭をガシガシと撫でていて。ハリーはくすぐったそうに身をよじって「やめてよシリウス」なんて言っていた。

そうだったのか。シリウスさんはハリーの後見人。もしも無実が証明されれば、ハリーは今住んでいる家から離れることができる。

辛そうな顔で、預けてもらっている家の話をしていたハリーを思い出す。彼には、余計なことを考えさせてあげたくない。だから、ハリーを心から愛してくれる人がいるなら、きっとその人と暮らしたほうがハリーのためだと思ったのだけれど、本人たちもそう思ってくれていたのだ。

「よかった...」

私がそういえば、後ろに控えていたタイリーが手を伸ばして、ハリーの肩をポンと一つ叩いた。

「よかったな、ハリー」
「ありがとう、タイリー...!!」

タイリーにそう言いながら、ニコニコと笑みを浮かべるハリー。私もその二人を見つめた後に、シリウスさんの顔を見つめた。

「自己紹介まだでしたよね?私は、グリフィンドールの5年生のヒヨリ・陸奥村です」
「俺は、タイリアナ・シェバンと言います。ヒヨリ様の使用人です」

後ろのタイリーと、私を見た後に、シリウスさんは手を差し出して口を開いた。

「シリウス・ブラックだ。君たち二人には感謝してもし切れない。ありがとう」

強く握るようにした握手は、これまでにないほどにきつくて、骨が折れるぐらい痛かったけれど、涙がたんまりと溜まってる赤い目を見たら、そんなこと、どうでもよくなるほどだった。





「ルーピン先生」

ダンブルドア先生との話を終えて、私とタイリーは先に部屋を出た。ハリーとシリウスさんはまだダンブルドア先生と話すことがあるのだろう。
不意に、昨日の夜のことを思い出して、私とタイリーはルーピン先生と話さないといけないんじゃないかと思ったのだ。人狼のこともだし、なんか色々と。

「...あぁ、君たちか」

先生は、部屋の中を整理整頓していた。そこら中にあった本をトランクに詰めたり、授業で使ったものを棚にしまっていたり。

「...辞めるんですか?」

そう聞いたのは、タイリーだ。
先生は、傷だらけの顔を上げて、タイリーを見ると、寂しそうに笑った。

「昨夜は申し訳なかった。狼になった私が君たちを襲っただろう?」

私とタイリーは首を横に振る。仕方なかったことだと思うし、それがイコール、先生につながるわけではなかったから。

「...君達は、とてもご両親にそっくりだよ。見た目ももちろん似ているし、それだけじゃない。後輩を大事にしてるところも」

ルーピン先生は私たち二人を見ながらそう言った。
思わず照れそうになるその言葉に、私とタイリは顔を見合わせて、どちらからともなく笑みを浮かべた。

「試験、お疲れ様。君たちの成績は、十分すぎるほどだ。きっと、立派な魔法使いになれる」

私たちにゆっくりと近づいて、そう言った先生を見上げる。ルーピン先生の教えが上手だったからです。そういえば、先生は声を上げて笑った。

「...またお会いできますか?」

そう聞いたのは、タイリー。私も顔を上げて、聞きたいことがたくさんありましたといえば、先生は優しい笑顔を浮かべて私とタイリーの顔を交互に見た。

「もちろん。君たちさえよければ、また」

先生はそう言うと手を差し出した。私とタイリーは恐るおそる手を出して、先生と握手をする。

「お元気で、ルーピン先生」
「もう先生ではないさ」
「では、次会うときにはリーマスと」
「あぁ、そう呼んでくれ、タイリー、ヒヨリ」

ルーピン先生は私とタイリーと強く手を握り合い、そして、また整理整頓を再開した。本当は手伝いたかったけれど、多分、ハリーが来るだろうと思ったから、私とタイリーはその場を静かに離れることにした。



アンジーとアリシア、フレッド、ジョージ、リーが待っている寮へと戻る。ふくろう試験は終わったのだ。そして私たち二人をずっと待って打ち上げをしていなかった5人のためにも、一刻も早く戻って、パーっと打ち上げをしたかった。

まずは何を飲もう?バタービールか、かぼちゃジジュースか。いや、やっぱりここはバタービールで決まりか。

後ろを歩くタイリーをちらりと見れば、タイリーは一瞬首をかしげて私を見ると、「どうしましたか?」と笑みを浮かべながら聞いてきて、私はそれに対して首を横に振って前を向いた。

さぁ、早く寮に戻ろう。

大切な人たちが待っている、グリフィンドール寮へ。



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