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なぜ、あの時ヒヨリたちが来たのかはわからなかった。それでも、人狼になってしまったルーピン先生から身を守れたのは、庇ってくれたタイリーたちのおかげで。いつも僕は、彼らに助けてもらってばかりだなと思った。
気づいたら医務室にいた僕は、慌てながらハーマイオニーとロンと共にダンブルドア先生に抗議した。
本当は、シリウス・ブラックは両親を裏切ってなんていなくて。ピーター・ペティグリューが犯人だった。
つまり、シリウスは無罪なんだ。爆発を起こしてマグルを殺してなんていないし。ましてやペティグリューを殺してもいない。だってあいつは生きているのだから!!
そう言っても未成年の魔法使いの言葉じゃ誰も信用はしてくれないといったダンブルドア先生に、若干のイラつきを感じている時、不意に医務室の扉が大きく開き、ヒヨリとタイリーが現れた。ヒヨリは、ダンブルドア先生をじっと見つめた後に口を開いて、こういったのだ。
「なら、純血名家の次期当主の話は信じてもらえますか?」
ヒヨリが聞かせてくれた式神から流れる声は、僕たちがあの叫びの屋敷で話していたことをそのまま録音していたものだった。紛れもない、真実だ。ペティグリューの声も聞こえるし、僕の両親をヴォルデモートに売ったという自白もあった。
これが、これがあれば!!シリウスの無実は証明される!!僕は目を見開いて、ヒヨリとダンブルドア先生の会話に耳を傾けた。
その時、先生が不意に質問をした。どうして、ヒヨリ達もその場にいたのか。
そのことについて詳細に説明をしてくれたヒヨリの言葉に、僕は思わず、下を向いた。反応はきっとそれぞれだっただろうけれど、それでも、僕たちは皆同じことを思っただろう。
「お主達は、良い先輩を持ったようじゃ」
そのダンブルドア先生の言葉に、涙が出そうなほど嬉しい気持ちを抱いた。
その後に、ダンブルドア先生は今までの表情を引き締めて、ヒヨリと話しをし始めた。元の話に戻る。つまり、シリウスの無罪についてだ。
「君たちも未成年の魔法使いには変わりない。その魔法に嘘偽りがないことは十分周知の事実だとしても、じゃ」
僕にはよくわからないけれど、確か前に、日本といえば守護魔法、というのが当たり前の事実だという事を双子のどちらかに教えてもらった。そして、日本の魔法は欧州の魔法と種類が違うことがある、とも。つまり、ヒヨリやダンブルドア先生の言うその"式神"というのも、日本に伝わる魔法で、きっとイコールで結びつけられるものなのだろう。
「この音声だけでは不十分だと仰るのであれば、陸奥村の名前を存分に使わせていただきます」
ヒヨリは、ハーマイオニーの元から離れて、ダンブルドア先生の前に立った。その声はいつもとは違うとても凛とした声だった
「私はかの高貴な、日本の神々の御元におわす純血華族を従える家の人間です。例え未成年だとしても、それだけで十分足りうる証拠になるのではないでしょうか?」
そういったヒヨリ越しに見えたタイリーが、扉の近くで下唇を噛み締めながら、二人をじっと見つめていた。
ヒヨリの言葉を聞いたダンブルドア先生は、ちらりと僕の目を見た後に、ヒヨリに視線を戻す。そして、一度目を瞑った後に、「よかろう」と、一言そういった。
「今夜はもう遅い、明日にでも話そうかのぅ。良いかな?」
「はい」
「わかりました」
ダンブルドア先生の言葉にコクリと頷いた二人を見て、先生はにこりと笑みを浮かべると医務室を出て行った。その姿を見送ったヒヨリの、息を大きく一つ吐く音がする。
「...とりあえず、一件落着かな?」
「そうですね。本人はいませんが」
「肉声があるってことが重要なんだと思うよ。あとはゴリゴリに頭の固い欧州の魔法界のお偉いさんたちが、純血主義を信じてるおかげかな」
そう、皮肉そうにいったヒヨリをタイリーが苦笑で見つめる。僕はベッドから立ち上がって、タイリーの方に走った。ハーマイオニーはヒヨリの手をきつく握っていた。
「...ハリー?」
「ハーマイオニー、どうしたの?」
タイリーとヒヨリの声がする。
ヒヨリの声は、さっきまでの声音とは違くて、いつもの柔らかい雰囲気を持った、そんな声に戻っていた。
「タイリー...!!ヒヨリ!!ありがとう...!!」
「私からも言わせて頂戴...!!」
ハーマイオニーの声が震えている。慌てて後ろを振り向けば、ヒヨリがハーマイオニーのことを抱きしめながら、優しく頭を撫でていて。僕はまた、タイリーを見る。僕の頭何個分も高い身長を見上げて、僕は、もう一度ありがとうとお礼をいった。
「ハリー、さっきもいったように本人がいるわけではない」
「それでも!!」
それでも、タイリーとヒヨリの聞かせてくれた音声があれば。
「...それでも、ありがとう、タイリー、ヒヨリ」
もう一度、そういえば、タイリーは目尻を下げながら、ゆっくりと僕の頭を撫でてくれた。
「...後、あの時助けてくれて...」
人狼になったルーピン先生から守ってくれたタイリーとヒヨリ。僕は小さい声で、タイリーにそう言うと、タイリーは撫でていた頭の手を僕の耳もとに持って行き、そして強く捻り上げた。
「いっ...!!痛いよ、タイリー...!!」
僕の悲鳴に気づいたのか、ヒヨリとハーマイオニーがこっちを見て名前を呼んだ。(ヒヨリはもちろんタイリーの名前を呼んでいた)ロンの「ハリー!?」という声の後、タイリーはようやく僕の耳から手を離して、腕を組んで僕を上から見下ろした。
それはまるで、グリフィンドールの王様の君臨だった。
「ハリー、君には前から言おうと思っていたことがある。...もう少し周りを見ろ。無鉄砲なことはするな。心配してる身から言わせると、命がいくつあっても足りない」
語気は強いけど、それでも目から感じられる心配という感情が、僕の目を貫いて。僕は下を少しむいて、「はい」と、おとなしくそう言った。
「ハリーのその向こう見ずな行動は今に始まったことじゃないしね...とりあえず全部終わってから、私の説教はやることにするから」
ヒヨリまでも、にこりと笑いながらそう言って僕を見て。そして次にハーマイオニーとロンを見た。ハーマイオニーとロンもバツの悪そうな顔を浮かべていて、僕は肩をすくめて、ヒヨリにもおとなしく「はい」と答えた。二人は監督生だからね。
「今日はもう部屋に戻ろう。スネイプ先生にも後できちんとお礼を言うんだよ、ハリーのこと心配してた」
でもさすがに、その言葉は嘘だろう?と思った。ロンも大きい声で「夢でも見たんじゃないのか!?」って言ってたし。
僕を心配するスネイプを想像して、やっぱりあり得るわけないと僕は首を横に振った。
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