どこにでも太陽はあるんだ、と思った。

12月になり、季節は冬へとなった。日本とは違う肌を突き刺すような寒さに最初の頃は体調を崩しそうになっていたものの、レギュからもらったココアがあったから、なんとか生きていけている。

同室の子達にも色々助けられながら過ごせていて、良い感じに学生生活を送れているんじゃないかなと思ってる。

そんな旨の手紙を書いて、ダンブルドア先生に渡したのはつい先日。今はお姉ちゃんからのお手紙の返事を持って、寮に帰る途中だ。

なんて書いているのだろう。ワクワクとしながら手紙を大事に抱えて歩けば、前の方に燃えるような赤い髪を持つ女の子が、壁に手をついてしゃがみ込んでいた。
苦しそうに肩で息をする彼女に近づく。もしかして、体調が悪いのかと思ってそっと、声をかけた。

「…大丈夫…ですか?」
「え…?」

ふと顔を見上げたその子の胸元にあったのは赤色のネクタイ。髪の色も相まって、よく似合っているなと思った。

「体調悪いの?」
「あ…違うの…えっと…」

その子は小さい声でしどろもどろになりながら言葉を紡いだ。「腰が痛い」そう言ったその子の言葉を聞いて、私は一つの答えにたどり着いた。自分のローブを脱いで彼女の腰部分に巻きつけて、支えるように立ち上がらせる。

「…初めて?」
「えぇ…」

腰に響かないようにそっと、ゆっくりと歩かせる。痛みは人によって様々だけど、初めて来た時の痛みは確かに尋常じゃない。私の手で何が治るかもわからないけれど、とりあえず気休め程度になればいいと思って彼女の腰を優しくさすった。

どうにかついた医務室にいたマダム・ポンフリーに簡潔に事情を伝えて、私は彼女を近くのベッドに座らせた。

「この薬を飲みなさい。きっと楽になるわ。服は汚れてはいないわね?」

マダムの言葉に、その子はコクリと首を縦に振る。それをみたマダムはニコリと笑みを浮かべて、「楽になったら寮に戻るように」と言って、ベッドの周りのカーテンを引いて奥に消えた。

なんとも不味そうなどす黒い色をしたそれを、ゴクリと飲み込んだその子は一瞬しかめっ面をして、中身のないゴブレットを近くの机に置いてふぅと息をついた。

「ごめんなさい…ここまで連れて来てくれてありがとう」
「いえいえ。女の子にしかわからない痛みですからね…初めての時は誰でも怖いと思います」

私が初めて生理になった時はお姉ちゃんに色々と教えてもらった。日本では、赤飯を出すのか風習となっているからか、何故か喜んで赤飯を出してくれたっけ。

「私はリリー・エバンズよ。グリフィンドールの2年生。貴方の名前は?」

彼女はニコリと微笑みながら私にそう聞いた。ベッドに座りながら、立っている私の顔を見上げる彼女に、私もゆるりと笑みを浮かべて自己紹介をする。

「リン・桜田です。ハッフルパフ生の1年生です」
「敬語はいいわ、よろしくねリン。助けてくれてありがとう」

差し出された手に自分の手を重ねる。
あまりの眩しさに目をしかめそうになるその笑顔に、私は目を見開いた。

まるでお姉ちゃんのようなその笑顔。

きっとこの子もまた、皆に好かれて心優しい賢い人なのだろうと思った。

「…よろしくね、リリー」

そう言えば、リリーはまたニコリと笑みを浮かべて、握っている手を強く握り返してくれた。

これが、年下のお姉ちゃんとの出会いだった。

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