「...とっても」

試験には落ちたけど、なぜだか他の先輩に気に入られて、一緒に歌うことになった、と言ったのはいつだったか。
モナカは日に日に歌が上手になっていって(もともと上手だったけれど)、きっとその気に入ってくれた先輩たちと歌うのが楽しいんだろうな、と思った。

「いつか君の歌声を、ステージで聴ける時が来るのかな?」
「どうだろう?」

机の上に座りながら、やっぱり俺の知らない歌を口ずさみながら教科書を開くモナカの横に腰をかける。

「その曲もマグルの?」
「ううん、先輩が作ってきた歌」
「へぇー...すごいなその人」
「レイブンクローでね、頭も凄い良いのその先輩」

教科書から顔を上げてにこりと笑いながら言うモナカの頭を、そっと撫でる。嬉しそうな顔をするモナカに、俺も嬉しく思った。

「楽しい?」

モナカは恥ずかしがり屋で、なかなか自分に自信を持とうとしない子だ。どこか消極的で、交友関係もそんなに広くはない。だって、いつも一緒に居るアンジーやアリシアはまだ、モナカの歌声を聞いたことがないんだ。

そんなモナカが、最近はとても楽しそうに歌を歌っている。

「...とっても」

モナカが顔を見上げて、にこりと笑いながらそう言った。思いの外近い距離に、お互いビックリしたけれど、なんてことはない、すぐにお互い笑顔になって、俺は気付いたら彼女の額にキスを落とした。

まるで妹のようなモナカに思わず、といった形だったけれど、モナカは顔を真っ赤にして下を向くと、自分の額に手を伸ばして前髪を何度かさすっていた。
その行為がますます家にいる唯一の紅一点の妹を彷彿とさせて、俺は更に笑みを深くした。


prev next


ALICE+