「ふぉっふぉっ」

ハロウィンは残念なことにモナカの歌声を聞くことはできなかった。何回も、同じ部屋なのだから聞かせてと聞いても、恥ずかしいと言って歌ってくれないモナカの声を聞けると思ったのだけれど。なんでも、クラブの先輩が東洋人だからという差別をして、試験自体受けさせてくれなかったらしい。

それを聞いたアンジーはもう、私が抑えないと殺しにでも行くんじゃないかというぐらいの怒り具合だった。それでもモナカがそんなに落ち込んでいないのには理由があって。

モナカの声を見初めてくれた先輩が、3人ほどいたらしい。

毎日遅くまで残って、その先輩たちと歌っている、と嬉々として言っていた。もしかしたら、モナカの夢は歌手なのかもしれない。なんとなくそう思い始めた2年の終わりごろ、ついに私とアンジーの1つの夢が叶うことになった。




「アンジー、アリシア!!おめでとう!!ついにレギュラー入りなんだね!?」
「来年度からなんだけれどね」
「でも凄いよー!!本当に嬉しい!!おめでとう二人とも!!」

ジョージからでも聞いたのだろうか。あの二人はよくこそこそ皆に隠れてどこかに行ったりしてるから。(一度フレッドたちも連れて尾行しようとしたら、ジョージにとても怒られたことがあった)

部屋に入るなりに私たちに抱きつくために突進してきたモナカを抱きとめる。アンジーは呆れたように「危ないじゃない」と言っていたが、顔には笑顔が浮かんでいた。

2年時は補欠だったクィディッチのチームに、来年からはレギュラーとして入ることができるようになったのだ。ずっと応援してくれていたモナカに、恩返しすることができる。私とアンジーは、彼女の背中に腕を回して、優しく何度もその背中を叩いた。





「モナカいるけど、どの声がモナカが全然わかんないわ...」
「でも一人すごい大声で歌ってる人いるわね」

一年も無事に終わり、長期休暇に入る前の最後のホグワーツでは、いつもの寮対抗戦の結果を告げられた後、学年末パーティーが行われていた。今は広間の前で、コーラス部の人たちが並んで歌を歌っていた。
モナカもその中にいるけど、人がたくさんいるからどれがモナカの声なのかはわからない。私とアンジーは身を寄せ合いながら、どれがモナカの声なのかを聞き分けるのに忙しかった。

そんな私たちをあざ笑うかのように合唱は終わり、コーラス部の人たちが列を崩して寮の席に戻ってくる。それを見て、私とアンジーが「あぁ〜...」と嘆いていると、前に座っていたジョージ(多分)が笑いながら、人差し指を前の方に向けてあっちを見ろと言っていた。

不思議に思って言われた通りにもう一度前を向けば、帰っていくコーラス部の人たちの中、同じ場所に立ったまま離れないモナカと、その他三人の生徒がいた。

「ふぉっふぉっ、素晴らしい合唱をありがとうと言いたいところじゃったが、まだ終わりではないようだのぅ...」

ダンブルドア先生が長い髭をさすりながらそう言った。まだ終わってないとはどういうことだろうか...?広間にいる人たちは全員、頭の上にハテナマークを浮かべているだろう。少しずつ騒めき始めた広間の喧騒を止めるかのように、一番前の端に立ったままにいた、スリザリンの生徒が力強い声で歌い始めた。

ビリビリと走る衝撃のような、そんな声。さっき聞いていた合唱はなんだったのだろうというぐらいの。

その声に誘われるように、端にいたモナカも他の二人も、その生徒の方に向かって歩み寄る。そして、四人は顔を見合わせてアイコンタクトをしていた。

「見えないわ、立っていいかしら」
「私も立つわ」

小さい声でアンジーとそう話し、私たちは椅子の上に立ち上がる。
さっきの声に静まった大広間は、皆何事かと首を伸ばしたり同じように椅子の上に立ち上がって今この瞬間をこの目に収めようと、人の身じろぎの音がやけに響いて聞こえていた。

四人は指を鳴らしながらカウントを取ると、綺麗なハーモニーを響かせた。

一人がメロディーを歌って、他の三人はリズムをとったりハモったり、コーラス部分を歌う。これが、アカペラというものだと知ったのは、前に座って聞いているジョージがそう言ったからだ。

初めて聞く曲は、初めてなはずなのにどこか心にきて、そして、とても頭に残るメロディーで。私とアンジーは手を繋ぎながら、モナカの歌声をしっかりと聞こうと耳を傾けた。

そしてサビに入って、青色のネクタイをつけた生徒が歌った後、ついにモナカが1歩前に出て歌い始めたのだ。

「きた...」

ジョージが、小さくそう呟いたのが聞こえた。



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