「歌は、それだけの力がある」

「ハーモニカルって最高な名前じゃない〜!?」

レイニーが腰をくねくねさせながらそういった。一体いつ名前を作ったのか。私達は皆目を丸くしてジェシーを眺める。彼女は依然として堂々たる姿を見せながら、私たちを見ていた。
いまだにこの部活を牛耳っているスリザリンの先輩たちが唇を噛みしめながら、ジェシーを睨んでいた。

「歌に、血や人種なんて関係ない。自分の気持ちに、想いに、全てに全力で捧げるの。歌は、それだけの力がある」

ジェシーは先輩たちを睨み返してそういった。コーラス部の部室は、一様にシンと静まり返る。私達をもみくちゃにしていた友達も先輩も、背筋をピンと伸ばしながら、彼女の声を頭に反芻していた。

歌に、血や人種は関係ない。

その言葉がどれだけの人を救っていると思っているのだろう。今、私たちの前に立ち上がるこの先輩に、どれだけの人がついていこうと思っただろう。

「思いを告げて歌わないあんたたちに、コーラス部は任せられない。全ての人が平等に楽しめる歌を、血や能力で穢すあんたたちの居場所なんてここにはない」

ジェシーが言った。
片足をダンっと床に叩きつける。静かな部室に音が響き渡った。反響するその音に、肩をびくりと動かす人が数名。私の隣にいたアンナとレイニーは、凛とした横顔を見せてジェシーの隣に並んだ。輝いて見える。そこに並ぶのは、緑と、黄と、青のリーダー。

彼女たちの後ろにいる私たちは、きっと今全員が同じことを思った。


ついていこう、と。



「ここは、自由の場!!誰にも穢させない、誰にもバカにはさせない!!私たち歌手の生きる場所!そこを無断で踏みにじむのなら、即刻ここから退場してもらう!!!」

一緒に放課後、四人で練習していると、だいたいはジェシーがその場を仕切ってくれる。アンナが作ってくれた曲を、レイニーが適当に口ずさんで、ジェシーがそこからメロディーやハモリを考えてくれる。その度に、この三人と一緒に歌える私はとても幸せだと思っていた。

「ジェシー・クリルロンの名の下において!」

この人が私たちのリーダーだ。

太陽の光に反射して、三人が光って見える。だけど、きっと実際に光っているんだ。
私たちの目には、彼女たちの姿が、声が、全てが、救いの日差しに見えた。私たちに、手を差し伸べている。私たちに、寄り添っている。

私達を、守ってくれている。

「ついてくる人はいる?この場所をより豊かに、この場所を、より素敵なものに。この場所を、私たちの場所に。そして、歌を、全員で、自由に歌えるようにするために。私達についてくる人はいる?」

ジェシーは、くるりと振り返った。手をそっと私たちに伸ばす彼女の隣で、レイニーとアンナもにこりと微笑む。ジェシーと同じように二人も手を差し伸べた。その手をつかめば、私たちは自由に歌える。この場所を汚したあの人達へ報復もできる。

私たちも、表に立てる。

全員思うことは一緒だった。後輩も先輩も、マグルも寮も貴族も何もかも関係ない。歌が好きな人達は、立ち上がる。

「「「「「はい!!!!!!!」」」」」


ジェシー・クリルロンをリーダーに。



私たちハーモニカルのリーダーが、今日この日、誕生した。










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