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「さて皆さん。晴れて全員E組を抜ける資格を得たわけですが...この山から出たい人はまだいますか?」


殺せんせーが教卓の前に立ちながらそう聞く。その手に持ってる湯のみからは湯気が出ていた。


「いないに決まってんだろ」


前原くんの言葉を皮切りに全員が口に出す。最初の頃に言っていた2本目のヤイバはすでに手に入れた。あとはこの先、どうやって先生を殺すかだ。


「ヌルフフフ...茨の道を選びますねぇ...。では今回の褒美に先生の弱点を教えてあげ...」


その時、教室中に響き渡る轟音に全員が立ち上がった。おもわずよろけて立ち上がってしまった私をみて、寺坂くんが走り寄ってきた。


「大丈夫か」
「うん...なんの音...?」


腕を支えてもらったまま周りを確認する。メグが窓に走って近づき、外を確認した。彼女は大声で校舎が半分ない!!と叫ぶ。


「退出の準備をしてください」


そんな中静かな声が聞こえた。校庭で立っていたその声の持ち主は、理事長だった。


「今朝の理事会で決定しました。この旧校舎は今日をもって取り壊します。君たちには、来年開校する系列学校の新校舎に移ってもらい、卒業まで校舎の性能試験に協力してもらいます」
「新校舎ァ!?」
「監視システムや脱出防止システムなど、刑務所を参考により洗練させたあたらしいE組です。牢獄のような環境で勉強できる私の教育理論の完成形です」
「どこまでも...自分の教育を貫くつもりですね」


理事長のあまりにも横暴な言葉に若干腹がたつ。殺せんせーの言った「自分の教育」というものに苛立ちを覚えて理事長を見れば、彼は胸ポケットから一枚の紙を取り出し、私たちに見せた。


「私の教育にもうあなたは用済みです。今ここで私があなたを殺します」


出された紙は解雇通知。その紙を見た瞬間に慌て出す殺せんせーにどうどうと言い聞かせて、理事長の言葉を聞く。


「私の教育に、不要となったのでね」
「...本気ですか?」
「たしかにあんたは超人的だけど、思いつきで殺れるほどうちのタコは甘くないよ」


カルマくんの言葉にうんうんと頷いて理事長を眺める私たち。眺めるというより睨むほうが近いか。
理事長はそんなものを無視して、穏やかな笑顔を隠さずに教室に入ってきた。

彼は机を真ん中に並べて、一つ一つの机の上に参考書を置く。


「さて殺せんせー、もしも解雇が嫌ならばもしもこの教室を守りたければ、私とギャンブルをしてもらいます。5強化の問題集と5つの手榴弾を用意しました。うち4つは対先生手榴弾。のこり一つは対人用...本物の手榴弾です」


理事長のいうギャンブルは、こうだ。ピンを抜きレバーを起こさないように問題集の適当なページに置く。そしてページを開いて一番右上の問題を解く。解けるまで一切動いてはいけないというルール。


「このギャンブルで私を殺すかギブアップさせられれば...あなたとE組がここに残るのを認めましょう」


げすいことを思いつくな、というのが私の第一印象だ。その時、私の腕を握ったままの寺坂くんが、理事長に名前を呼ばれた。


「寺坂くん。殺せんせーが勝てる確率を式から答えて」
「...対先生弾が爆発してもあんたはもちろん死にゃしねえ。あんたをころすには最後まで本物の爆弾を残しとかないといけねーから...」


寺坂くんが成長している。おもわず目を見開いて隣に立つ彼を見上げれば、その目がうざかったのか、誰にもバレないように腰あたりを小突かれた。


「20%だろ」
「正解」


理事長と一緒に自分もぼそりと正解と答えておけば、寺坂くんは小さい声で黙ってろと言った。


「しかもタコが4回ころす爆弾を受け続けなきゃいけねーのにてめーは危なくなったらギブして無傷。圧倒的に不公平だろーが」
「寺坂くん。社会にでたらこんな理不尽の連続だよ。強者と弱者の間では特にね。だから私は、君たちにも強者側になれと教えてきた」


殺せんせーとしての進退は全て理事長の思うがまま。解雇をちらつかせあからさまな絶対有利なギャンブルを仕掛ける。なんて性格の悪い人なのだろうと思った。

殺せんせーはゆっくりと椅子に座り、まずは数学の参考書を開いた。瞬間、爆発する手榴弾に全員身を引く。

ドロドロになっている殺せんせーをみて思わず口を手で覆った。今までで一番簡単な暗殺だと言っても過言ではないこれに、殺されてしまうのだろうか。

と思った心配も杞憂におわる。先生は次の社会の参考書を開いて答えを書き終えていた。


「この問題集シリーズ、ほぼほぼどのページにどの問題があるか覚えています。数学だけ難関でした。生徒に長く貸してたのでわすれてまして...」
「私が持ってきた問題集なのにたまたま覚えていたとは...」
「まさか。日本全国全ての問題集を覚えましたよ。教師になるんだからその位はするでしょう。問題がとけるまで爆弾の前から動けない。こんなルール、情熱がある教師ならばクリアできます。あなたなら私をわかってくれていると思ってましたが...」


殺せんせーはそう話しながら。国語、理科と続いて解いていく。


「のこり1冊、あなたの番です。どうですか?目の前に自分の死がある気分は。死の直前に垣間見る走馬灯。その完璧な脳裏に何が映っているのでしょうか?」




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