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「思いのほか不利になったな」
「ああ...人数はほぼ互角だけど男子の数は赤が多い」


全員超体育着に着替えて、BB弾を銃に入れる。どう考えても、あっちが不利なのは考えればすぐにわかる。私にとっての要でもある律は中立の立場だから使えない。さてどうしようかと、周りを巡らせて考えた。伊達に数学者の娘だと名乗っていない。こんな状況だとしても私の頭は計算を続けているんだ。


「さて、と、皆」


何を言ったってこの人数やメンバーを変えることは許されない。何かを言うことに区切りをつかせた磯貝君が立ち上がり、私たち全員を見渡したのちに口を開いた。


「わかっているとは思うけど、ここのチームの指揮は新稲に任せたい。異論が有る人はいるか?」


その言葉に、全員が私をじっとみつめた。この戦争を勃発させたのは渚君だけど、彼も異論はないらしい。私の目を見つめて、固く唇を結んでいた。


「...よし、じゃあ新稲、頼めるか?」
「もちろん、私でよければ」
「多分あっちはカルマが指揮を執ってるんだろうな...」
「だとしても、指揮力なら新稲だって負けてないさ」


前原君の言葉に、杉野君がそう答える。プレッシャーだなあと少し苦笑気味に言えば、愛美が私の手をぎゅっと握ってくれた。


「愛美...」
「私達は、サチちゃんを信じていますよ」
「そうだよ、サチ。莉桜や寺坂君と対立してしまったのは仕方ない!」
「いや別にそれを考えてるわけではないんだけどね!?」


ひなのが私の頬をえいえいと突いてくるのを、少し気恥ずかしくなりながら避ける。皆がわたしをニコニコと笑いながら見てくれていた。できる限り、答えて行かないと。


「学校の裏山に合わせた迷彩塗らないとね。赤チームは菅谷君が完璧に仕上げてるはず」
「あ、私やるよっ。菅やんに前に塗り方教えてもらったんだ〜〜」
「じゃあひなのお願いね」
「はーい!任せてっ」


原ちゃんの言葉に「私やる」と答えてくれたひなのに迷彩は任せて、私は渚君を呼んだ。


「渚君、いい?」
「あ、なに?新稲さん」
「渚君には一切指示を出さない」
「え?」


彼を戦士として使うよりも、好きに動かせた方がいい。渚君はタイミングも状況把握もズバ抜けているからだ。だけど、だれかの指示に従えば、それが落ちる。


「戦況を見て、好きに動いて。渚君は、それが一番向いてる」
「でも...」
「大丈夫。私は渚君が動けるように、状況を動かすから。何も考えずに、自分のやりたいように動いて。それも計算しておく」
「新稲さん...ありがとう!」


渚君はそういうと、迷彩色に塗り分けされずに走ってどこかへと消えていった。あとは全部、彼に任せて置こう。


「私の作戦を言うから、皆、聞いてほしい」


ひなのに迷彩を塗ってもらった皆は、私を囲むように座る。ひなのはスプレー缶を振りながら私にささっと塗ったあと、足元に座った。こんなに素早く濡れるなんて、皆色んな技術をこの1年間で手にしてきたんだ。改めて、私自身も力を発揮していきたいと強く思った。


「どう考えてもこっちは一方的に不利。それは皆わかってると思う」
「そうね、各分野のスペシャリストもいるし」


メグの言葉に私は頷く。最悪なのが狙撃の達人が二人ともあっち側にいる事だ。狙われたら即終了。だけど逆に、狙わせておけばいいとも考えられる。


「...全力で、このチームが勝てるように指揮したいと思ってる。色んな可能性も十分にあり得る。どんな方法でも皆を勝たせてあげたい。一人の勝ちじゃなくて、チームの勝利を導きたい。だから、どんな指示でも従ってほしい」


たとえそれが捨て駒だったとしても。

私が伝えたいことがわかったのか、皆は意を決したように首を縦にふってくれた。


「誰かの勝利じゃなくて、皆の勝利。サチの言いたい事は、十分に伝わってるよ」


茅野っちがそう笑顔で言ってくれた。その言葉に賛同するかのように頷く皆をを見つめて少し安心した私は、一度深呼吸をした。そして、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「ありがとう」


私の頭を、信じてくれて。


「...このフィールドで中央突破は難しい。千葉君と速水さんがあっちにとられてるからね。それにカルマ君もあっちにいる。出来るだけ最速に指示を出すから、皆、よろしく」
「「「おう!!!」」」


頼もしい声だ。このチームなら大丈夫。そう思えるほどの、笑顔だった。



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