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敵戦力もあらかた削ることはできた。劣勢ではあるけれど、どうやったらこの状況を覆せるか。今はさきに速水さんとイトナ君を殺るのがさきだな。


「...今この劣勢を覆すには、守備を捨てる必要がある。速水さんとイトナ君を真っ先に狙いたい。銃撃戦が始まったら、すぐに旗を狙いに行って」


まだ残っている磯貝くん、前原くん、愛美、矢田っちにそういえば。四人はコクリと首を縦に振った。それを見届けて、私は立ち上がる。守備を捨てればこっちにやってくる人もいるだろう。きっと莉桜と寺坂くん達だ。私は彼らを釣る囮でいい。


「行くよ!!」


声をかければ皆が走り出し、それを見ていた速水さんが銃を連射する。その流れ弾にあたった愛美がやられた。とっさに前原くん達を左に行けと指示した瞬間、私の肩に銃の弾が当たった。


「...寺坂君...」


こっちに走ってきている寺坂君と莉桜がいた。彼の手には銃が握られていて、あぁ、やっぱり彼に撃たれたのかと思わず口元を緩めてしまった。


「指揮官をやった!あとは畳み掛けるぞ!」


村松君の言葉に、思わず笑いが溢れる。矢田っちも磯貝君もやられた今、明らかに戦力がないのはこっち。だけど、何も考えずに私が守備を捨てることはあり得ない。

全部、彼のためにこの戦況を動かしたのだから。


旗に向かって走ってくる寺坂君たちを、いや、私達全員をあざ笑うかのように、彼は突然現れた。


「(あぁ、なるほど、そこにいたのね...)」


地面に座り込んでその状況を眺めながら、私は思わず呟いた。


「それは計算外...」


鮮やかに、四人を殺したのは渚君だった。瞬時にまた、元いた場所である烏間先生のうしろに隠れるのを見やる。そういう突飛な考えを出されるから、困ってしまうのだ。だけど、それでこそ渚君らしいとも言える。

肩に着いたインクを払って立ち上がり、死亡した人が集まる場所に行こうとすれば、私の手をなにかがつかんだ。思わず顔をそっちに向ければ、同じように向かおうとしていたのだろう寺坂君がいた。


「だから言っただろ」
「うん」
「俺以外で、誰がお前を守るんだよ」
「うん...そうだね」


思わずでる笑みを見せれば、何笑ってんだと言いながら、優しく頭を小突いてくる寺坂君。彼の隣をゆっくり歩いていけば、にやにやと笑っている莉桜が、木に寄りかかって私を見ていた。


「サチ〜〜これ、聞こえちゃってるよ」


と言って指で刺したのは、ジャケットの首元についてある無線の場所。オフにしてないから、私や寺坂君両方の無線から聞こえているだろう。「てめーらいちゃついてる場合じゅあねーぞ!!」と、前原君の怒った声が聞こえた。


「なっ...!!!」


赤く顔を染めている寺坂君の腕をツンツンとつつく。慌てたように私を見る彼に、私は踵をあげて背伸びをした。


「なに...っ」


寺坂君の頬に、一瞬だけ唇をつける。無線で聞こえちゃってるなら、仕方ない。みるみるうちに茹でタコのように赤くなる寺坂君を笑って見つめて、少し目を見開いてわたしを待っていた莉桜の元へと走り寄る。


「いくよ、莉桜」
「...やるねーサチ」
「でしょ?」


赤い顔のままの寺坂君は置いておく。私だって少しは恥ずかしいのだ。言葉に乗せれば聞こえてしまう。聞かれてまずいものでもないけれど、それでも「いつも守ってくれてありがとう」なんて、誰かに聞かれたいわけでもない。

わかってくれただろうか?きっと、わかってくれただろうな。

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