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「先走りやがった。描く通りに動かないねって人って奴は」
こんな勝手に動き回るような生物をずっと指揮してたとか、新稲ちゃん化け物かよ。一番厄介なのは彼女だ。どれだけ戦力を削ったとしても、残り1つのコマがいても、動かし方を何通りも持ってる彼女さえいれば、こんな戦力の差はすぐに覆されるだろう。
「しゃあないねぇ。この副官様が決めに行ってやりますか」
中村がジャージを脱ぎ捨てて立ち上がる。
「中村、丸腰で攻めに行く気?武器は?」
「??3ばかを使うよ。そのためにあそこに配置してんじゃないの?」
「...さすが、わかってるねぇ。よろしく〜〜」
「ほーい」
中村が3ばかの所に着いたら、新稲ちゃんを殺らせに行く。彼女の計算がどれだけずば抜けているのか、隣の席で何度も見届けてきた。あぁ、俺この人には勝てねーなって。そう思うぐらいの分析力なのだから。
ぶっちゃけるなら、今この状況でさえ、彼女の計算の内なのではないかと考えてしまうほどに、焦っている。
だけど、こっちには要の速水さんがいる。射程や命中は千葉よりは劣るけど、動体視力やバランス力ははるかに上だ。こういう動き回れる戦場でこそ発揮できる。今頃あっちは速水さんが厄介だと思っているに違いない。
「...速水さん、イトナ。そろそろそっちから大勢くるだろうから、最低でも足止め可能なら殲滅して」
『...了解』
「中村聞こえてる?銃撃戦が始まったら一気に勝負決めに行って。新稲ちゃんもそこにいるはずだから、真っ先に殺せ」
『了解〜〜』
策は積むだけ積み上げた。一番不気味なのは、三村も発見できなかった渚くんぐらいか。新稲ちゃんが渚くんを動かしているのか、動かしていないのかはわからない。そもそも、開幕から彼の動きは全く知られていないのだから。
「...ちっ」
もしも俺だったら渚くんをどう動かすか。その考え方が得意なのは、新稲ちゃんだ。今以上に彼女の計算の仕方を教えて欲しいと思ったことはないだろうな。
思わずでる舌打ちを、苦笑を浮かべる事でごまかした。誰かが見ているわけではないけれど、指揮官が焦るわけにはいかない。この一年の新稲ちゃんの活躍を見て学んだことだ。一度だってあの子が焦っている所は見なかった。
「指揮するってのも、大変だわ...」
数学者の娘って、すげーな。
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