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皆との戦いも終わり、ひとまず休憩がてらと超体育着から制服に着替える。着替えてる途中何度も莉桜やひなの達に茶化されたけど、とりあえず無視しておこう。烏間先生に返してもらった律がウインクをしながら私を見ていた。なんだろう、この気恥ずかしい感じは。


時間も過ぎ、全員が教室の席についている。殺せんせーを殺さない事に決めた私達が、次に行うことは何かを話し合うためた。竹林君が黒板の前にたち、話し始めた。


「普通に考えてみよう。各国首脳は、本当に先生を殺す事しか考えてないのかな?僕は違うと思う」


本来の目標は地球を守ること。殺す以外の方法で爆発しないように研究をする事も、ある種では一つの選択肢だ。殺す研究と平行で、助ける研究が行われていたっておかしくはない。

そう続ける竹林君の言葉を聴きながら、私はパソコンと律の本体をいじる手を早めた。


「それを皆で探って見ないか?」
「おそらくそれは無理だ。

このタコを作った研究組織は、月の爆発以降その責任を問われ、先進各国に研究のデータと主導権を譲り渡した」


今では各国トップの研究機関が研究を分担し、地球を救うための国際プロジェクトチームが形成されている。もちろん、研究内容は国家機密。中学生が覗き見るのは難しいし不可能に違いない。

でもそれは、普通の中学生の話しだ。

最後にエンターキーを押して、私は一息つく。


「おーけーかな、律」
「はい、マスター」
「烏間先生、プロジェクトのデータベースに侵入しました」
「なにい!?!?!?」

驚いた声をあげる烏間先生に、この人こんな声も出るんだなと私は思わずおどろいた。
座っていた席から立ち上がり、律の本体に画面を示す。そこには研究内容や実験スケジュールなどが書かれたデータがずらりと並べられている。


「この1年、伊達に私と律が計算をつづけてきたわけではないので。オンラインで繋がってるCPUなら大体入れます」
「この一年、一杯機能拡張しましたから...」
「律、脱がなくていいからね」


制服のボタンを一つずつ外して妖艶に脱ぎ出す律に、私はストップをかける。


「すげえ...世界中でやってる研究項目と研究スケジュールが全部わかる!!」


皆が驚いた声をあげながら教室の隅っこにやってきた。私はそれでも、首を傾げながら困ったように笑って続けた。


「だけど、具体的な内容は保護が厳重過ぎて入れません。研究の核心に関わる情報はすべてオフライン。最重要情報に至っては専用回線すら使われてない徹底ぶりです」
「じゃあこいつらどうやって伝えてるの?」


莉桜の疑問に答えたのは、殺せんせーだ。


「要するに、手渡しです」
「ですね...原始的だけど、私達みたいにハッキングする奴らからまもるにはそれが一番効率的ですし...」


ぶっちゃけこれ犯罪だよね。とは思うけど、今は置いておこう。何より大事なのは、殺せんせーを守ることなのだから。


「で、肝心の殺せんせーを救う研究はやってんのかよ?」
「タイトルをみれば、だいたいの内容は察しがつくね...えーと...」


不破さんが画面に指をスライドしながら探す。専門用語や英語が沢山ありすぎて、私にはここまでだ。不破さんはある一点を見つめるとこれだ!と大きく声をあげた。


「アメリカ班の研究!触手細胞の老化分裂に伴う反物質の破滅的連鎖発生の抑止に関する検証実験!」


長ったらしいタイトルだけど、抑止と書かれているならビンゴだろう。


「最終結果サンプルは1月25日。ISSより帰還予定...?」
「ISSって...」
「国際宇宙ステーション!?」
「あっありえます!無重力や真空じゃないとできない研究も多いと言うし...!それに、その、万が一大爆発するような研究をしてたとしても、宇宙空間の方が被害が小さい!」


だけど問題は、ISSから帰還したその情報を私達はいつ聴くことができるのか、ということだ。最悪な話、機密の多い情報だしすぐには聞くことはできないだろう。


「厳しい事を言うようだが、上にとって君らは末端の暗殺者の一派にすぎない。状況によっては最後まで君らには情報は来ない」
「それじゃ最悪な場合、私達は先生を救えるかどうかもわからないまま、もやもやした気持ちのまま三月まで暗殺を続けろと?」


原ちゃんの言葉に全員が下を向く。だけど、そんな中途半端な気持ちで居たいなんて、誰もが思っていない。先陣を切って言葉を発したのは、カルマ君だった。


「烏間先生、結果はどうあれ俺ら暗殺はやめないよ。けど、半端な気持ちでやりたくない。救う方法がもしあれば救うし、なければないで皆も腹を決められる。...でしょ、渚?」
「...うん。クラスの大事な目標だもんね」
「だから今はっきりと知りたいんだ。卒業まで堂々と暗殺を続けるために」


カルマ君の言葉に、烏間先生は少し困ったように頭をかいた。そりゃ困るだろう。その時、なぜか惑星の形に顔を変えた殺せんせーが、烏間先生に席を外してほしいとお願いをした。
教室から静かに消える烏間先生を見届けたあと、殺せんせーは私たちに向かって口を開く。


「さて、つまり君たちの望みはこうですね。宇宙から戻ったデータがアメリカに渡る前に、ちょっと盗み見させてほしいと」


その言葉に賛同の意味で全員が首を縦に振った。だけど研究スケジュールには、研究データを積んだ帰還船は太平洋上に着水し、帰還船ごと開封せずに回収する、と。
殺せんせーは5トン以上のものをもつのは困難らしい。その言葉に少し落胆の色を見せ始めた時、殺せんせーはいつものワクワクとした表情を見せながら、タブレットを見せた。


「そこで、です!近々これが打ち上げられるのを知ってますか!?日本で開発中の、有人宇宙往還船の実証試験機です」


タブレットに示されているのは宇宙船だった。
先生が言うにはこう。センサー付きのダミー人形を座らせて、生命維持に問題ないかを計測し、荷物をつんで地球に帰還。この日本の宇宙船がつくのは、アメリカのデータがISSを離れる三日前。


「もしもこの時、ダミーではなく本物の人間が乗っていたら?」


その言葉に、全員が驚きと苦笑を同時に見せただろう。カルマ君でさえ冷や汗をかきながら「うちの先生頭おかしーわ」と言っていた。まさしくそのとおりである。


「そう!暗殺教室!季節外れの自由研究テーマ!宇宙ステーションをハイジャックして、実験データをぬすんでみよう!」


そんな殺せんせーの突拍子もない言葉により、前代未聞の自由研究が始まった。


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