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殺せんせーも無謀な事を言うものだ。ISSを乗っ取るなんて突拍子もない。
「今回の計画は、いかに相手の眼と耳と手足を乗っ取れるか。関係者の大半は暗殺と無関係な人達ですから、あまり余計な迷惑をかけてもいけません。できますね?新稲さん、律さん」
「はい、任せてください」
迷惑をかけないために、管制室のセキュリティに遠隔で侵入できるウイルスやらなんやらを仕込まないと行けない。任せてくださいと言ったはいいものの、なかなかに厳しいものではある。
パソコンの画面で、笑顔を携えながらこっちを見ている律が、マスターと一言言った。
「ん?」
「大丈夫です。マスターと律、二人でなら、どんな問題だって解決できます」
今まで色んな計算をしてきた。沢山の問題にぶつかってきた。それでも、二人で乗り越えてきた。
目を瞑って思い浮かべる。1年間で何度私たちは顔を見合わせて計算してきただろう。こんなに頼もしい相方がいるのだから、きっと大丈夫だ。
「そうだね、頑張ろう、律」
「はい、マスター」
大船に乗ったつもりでドーンと構えていてほしい。そんなことを言えるわけではないけど、そのつもりで私は全力でやろうと思った。
そして、1月18日決行の日。
全員が超体育着に着替えて、宇宙船開発ステーションに侵入した。まずは矢田っちとひなのが、防衛を手薄にするために乗り込む。端的に言えば逆ナン的な感じだ。それを盗聴しながら、私は木村君にUSB端子を渡す。
「もう一回言うね、管制室のパソコンならどれでもいい、カチッて音するまでよろしくね」
「おう」
返事をした木村君は、菅谷によって超体育着を白色に変えたあと、急いで管制室の方に向かった。
うまく侵入できたらしい木村君の声が、無線機から聞こえる。木村君は、USB端子を差し込んでなんとか退散できたらしい。私は律をパソコンに起動させて、キーボードを動かす。最後にエンターキーをひとつ押せば律はゆっくりと目を開き、成功しました、と言った。
「管制室のパソコンに遠隔操作ウイルスを侵入させました。以後は私の命令でも完管制センターを動かせます」
「次にロケット付近のセキュリティをオフにするね。多分これで、発射台近くまでは簡単に侵入できるはずだよ」
「よっしゃ、ありがとうな新稲、律」
磯貝君の言葉にこくりと首を縦に降る。ここで私の出番は一旦終わりだ。あとは皆が発射台の方までいくのを陰ながらにサポートをするだけ。メグを筆頭に忍び込むための小隊を作った皆を見届けようとすれば、不意に私の隣に立ってきた寺坂君が、ぽんぽんと頭を叩いてきた。
「おつかれ」
「うん、ありがと。気をつけてね」
「おう」
ニヤニヤと笑ってるカルマ君のことは一切無視して、彼らを見届けた。さっさと行けと手をしっしとやれば、カルマ君は一層にやけを顔に浮かべて、彼らを追うようにその場から消えていった。本当にあの人はからかうのが好きだな。
ため息をつきながら、皆から聞こえる声を無線から聞けば、なんとか発射台のダミー人形をとりだす事に成功したらしい。声を聞く感じでは渚君とカルマくんが乗るようだ。二人が無事に入れた事を確認してから、全員が戻ってきた。
ロケットが発射をするのを皆で見上げる。空遠くに、ロケットが飛んでいった。マッハ23、殺せんせーよりも早い速度で、渚君達は宇宙へと旅立っていった。
「...よし、ISSから地上への中継を遮断するね。律」
「はい、マスター」
律はハサミを取り出すと、ISSと地上の中継地点の場所をぶちっとハサミで切った。これでカルマ君と渚君がバレることはないだろう。あとは全部律に自動プロジェクトを組み込んだから、大丈夫だろう。
ふう〜〜と一息ついて腕を伸ばせば、愛美や原ちゃん、莉桜が私の背中をさすりにきた。
「お疲れ様です、サチちゃん」
「おつかれ、サチ」
「大仕事だったね」
「3人とも... ありがと、つっかれたー!!」
背中をうしろにたおして地面に転がれば、クラスの皆がクスクスと笑いながら私を見ていた。岡島の「新稲の頭がないとできなかったもんな」との言葉に私は首を横に降る。
「そんな事ないよ。律がいたから」
沢山乗り越えたからこそ、わかる事。何回だって律と二人で頑張った。いくつもの困難にも立ち向かえた。律がいたから、律に、出会えたから。今の私がいるんだ。
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