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定刻通り、渚君たち二人が乗った帰還船は戻ってきた。殺せんせーが押し出す事でゆっくりと、私達の教室に船が降りる。宇宙服を着た二人を皆で手を貸す事でゆっくりと引き上げて、労いの言葉を投げかけた。
まずは渚君からパソコンを受け取って、私はそそくさと教室に戻り、宇宙でもらった研究のデータのコピーをパソコンに映しだす。律にはまだまだ働いてもらおう。
「マスター、いかがですか?」
「...うん、偽証の痕跡はない、おっけー。律、本体に映せる?」
「はい、お任せください」
律が完璧に確認はしているだろうけど、念のため人間の目でも確認をしておこうという事で、もう一度確認を行えば、きちんと完璧な本物のデータだった。その内容を律本体に映しだすことで、全員にも観れるように工夫する。
教室に全員が戻った事を確認して、私は愛美の名前を呼んだ。
「愛美!愛美なら、この内容をわかりやすく伝えること、できるよね?」
そういえば、愛美は目を大きく開いて笑顔を見せた。「はい!」その返事に、思わず私も笑顔を浮かべる。
彼女が要約すると、こうだ。爆発のリスクはサイズに反比例すること。強引に細胞を分けた場合も同様に爆発する。したがって、ほぼオリジナルベースである殺せんせーが爆発リスクは思われたよりも低い。さらに、凝りをほぐすような流動性をもたらす薬品を加えれば、さらにリスクは抑えられる。
それも、1%以下に。
「この薬品って作れんのかよ?」
「割と簡単です。ていうか私...以前にこれとほとんど同じ薬を作ったことが...」
愛美の言葉に思い出されるのは、この教室が始まった最初の時に愛美が先生に飲ませた薬品。まさかそんなところに解決の糸口があったとは。思わずあんぐりと開けた口を閉じることを忘れてしまった。
「なんにせよ、1%以下じゃ無いも同然だ!殺せなくても、地球が爆発しないで済むぞ!!!」
杉野君の言葉に全員が感極まって雄叫びをあげる。私も、となりにたつ寺坂君の顔を見上げて、ほろりと涙を流してしまった。嬉しそうなのに、少しシャイな反応を示している寺坂君が、私の頭を不器用に撫でてくれた。皆、うれしいんだ。
「じゃあ皆、暗殺は」
「えっ」
「一学期から続けてきた暗殺は、今日限りで終わりにしていいんだな?」
「どーしてぇんだ、言い出しっぺは?」
爆発しないのであれば、殺す必要もない。一瞬で祝福モードだったクラスが静まり返った。寺坂君の言葉で、全員が渚君を見やる。彼は少し困ったように俯くと、顔をあげて口を開いた。
「カルマや中村さん、千葉君や速水さんや殺す派だった皆。トンネルを抜けた今だからこそ、全員の気持ちを大切にしたい」
渚君の言葉により、私たちがだした結論はこうだ。国からの依頼が消えない限り、3月まで全力で暗殺を続ける。なぜなら暗殺は私たちの使命で絆であり、出会わせてくれた必修科目だからだ。
ただし、暗殺期限の3月までに殺せなかったら私たちは卒業する。そこからは標的者と暗殺者の関係からただの生徒と恩師に戻る。
この1ヶ月で命について何度も考えた。なんでも受け入れる覚悟を決めた。だから、全てにたいして全力で、私たちは立ち向かっていきたい。そうおもうんだ。
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