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「メリークリスマス!!」


2月のこの季節にサンタ服とは謎すぎる。女子も男子もあのタコに渡されたサンタ服を着ながらなぜかクラッカーを鳴らしていた。新稲も例に漏れずそのコスチュームを着ていて、ほかの女子と同じ様に露出していた。
ほかの女子ならともかく、仮にも自分の彼女でもある女がへそやら足を出してるのは目に毒だ。なぜか始まったクリスマスパーティーをよそに、俺はとりあえず新稲の隣に立つことで、ほかの男子から新稲が見れないように壁になっておいた。


「たべる?寺坂くん」
「おう」


何も気にしていないのか、無邪気にフライドチキンに頬張りながらもぐもぐと口を動かして、俺にそのチキンを渡してくる新稲に苦笑をこぼす。こいつはなんもわかってねーな。


「おっと、良い子はもう寝る時間です!先生も別室で寝るので早く布団に入りなさい」


タコはそう言うと、教室から出て行った。そそくさと準備されていた布団の中に、入るクラスの奴ら。新稲は奥田の隣で寝るようだ。


「よく寝ておるよく寝ておる。よもや先生がサンタとは思うまいて」


小声でそういいながら暗くなった教室に入るタコにめがけてナイフを持って飛びかかれば、一瞬の内に部屋が明るくなったかとおもうと、サンタ服から着物に着替えさせられていた。


「明けましておーめでとー!!新年が始まりました!気持ちを新たに勉強に暗殺に邁進しましょう!」


タコはそう言うと、横に寝転ぶ。


「さて、あとは寝正月です」
「なんなんだよこの流れは!?」


全員でツッコミをしても、タコはあいも変わらず寝転がったままだ。俺はめんどくさくなって着物を脱ぎ捨てた。新稲も、窮屈だったのか少し帯を緩めながら中村と話している。「殺せんせーの頭にあるの鏡餅か。う◯こかと思っちゃったよ」「あんたねぇ...」そんな会話が聞こえる。俺はそっちにも思わずこめかみを震わせた。


「その通り不破さん!せっかくの一度きりの冬休みなのに、皆さんだれも学校に遊びにきてくれず...先生のことで真剣に悩んだり頑張ってくれてたわけですから!こっちから遊びにも誘いづらいし...」
「こいつはこいつで悩んでたんだな...」
「俺らがめっちゃ重い気分の時にふざけた悩みを...」


思わず呆れながらため息をつけば、村松と吉田も続けてため息をつきながら声を発した。本当にくだらない悩みをしやがって。

そうしていれば、タコは泣くのをやめて、また寝転ぶと前もって準備していたらしいテレビの方に顔を向けた。このまま続きをやるらしい。


「冬休みムードで油断している先生を殺してみなさい!」


テレビの中にはあいつの分身が番組を演じている。どこまで暇だったんだこいつは。しかも自分の分身がやってるネタに爆笑していて、さらにイラつかせやがる。全員の殺意がマックスになったのか、俺だけじゃなくほかの奴らの手にもナイフや銃が握られていた。

そうと決まれば突入だ。全力でタコを殺す気で襲いかかった。








「そして節分...と。やっと日付に思い出が追いつきましたねぇ...」


教室の真ん中に立ちながら、メモ帳にペンを走らせるタコを前に、俺らは肩で息をする。床一面に豆が転がっている。相変わらずマッハで移動するせいで、全く攻撃があたらねぇ。


「これで年末年始は思い残すことなし。安心して次の段階へ進めますねぇ」
「...次の?」


タコはそう言うと、いつもの服に着替えて。触手全てに教科書や参考書を持ち始めた。


「さぁーーーさ皆さん!暗殺もいいけど受験もネ!!」


一気に現実に引き戻された感がある。
向き合いたくなかった現実に、全員が目をそらそうとするのも無理はない。俺もそのうちの一人だ。いやむしろ筆頭だ。


「いきなり現実に引き戻しやがって」
「当然でしょう。私立なんてもう再来週に迫っています」


そういえば新稲の受ける高校は私立だから、もうそろそろだと言っていたな、と思い出す。廊下側でたっている新稲をちらりと見やった。


「受験の結果が出たあとで、再び皆さんと面談をします。それぞれが...ここを出た後、どういう未来を選びたいのか」


タコはなおも続けた。
暗殺の結果がどうなろうと、俺たちの暗殺は卒業で終わりだ。


「ナイフと銃を置き...それぞれの道へ歩き出さねばいけません。一度きりなのは行事に限らず、殺せようが殺せまいが、必ず別れは来るものです。

それが、教室というものだから」


とりあえずは、地球が爆発しないとわかったのもつかの間、次に俺たちは自分自身と見つめ直さないといけないらしい。未来のための2月を、どうやって過ごすのか、と。



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