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「受験...か。暗殺のことで悩んでたから準備不足は否めない...」
「そんな事はありません。言ったでしょうちゃんと準備を進めていたと。皆さんの一月を思い出してごらんなさい」


殺せんせーの言葉に、私は机に頬杖をつきながら思い出す。1月といえば、つい最近のISSハイジャックの時。家で律をシャットダウンした後にプログラム専門書を開いていた時のことだ。

『こんなコードで遠隔操作できるのかな...もしばれたらおしまいだよ...』
『だけどここで上手く計算できれば、今後の道が広がるぞ。理数系に力を入れた全国随一の高校に入るんだから、これぐらいできないと!頑張ろう!』

たしかに、不自然に受験の事を思い出していた時があった。


「先生のマッハささやきはまるで本人のセリフのように語れます。受験の意識をサブリミナルで高めておくのもお手の物」


チートやん。思わず呟いた言葉に、となりに座るカルマくんがぶはっと笑い出した。


「未知の高校受験は怖いでしょうが、一つだけたしかなのは、先生を殺すよりははるかに簡単!さあペンを取って!」


先生の言葉にそれもそうだな、と頷く。目の前にあるのは一人一人に合わせた小テストらしい。私の前にあるのは数学と物理のテスト、2枚ずつ。明らかに今までの期末試験や授業で出てきたような問題ではない。

私が入ろうとしている高校はそれほどまでに、理数に自信のある人たちがたくさん入る学校なんだ。気を引き締めて、私はペンを握りしめた。












「お前の行く高校、もうそろ受験か?」
「うん、再来週の月曜日」
「すぐだな」


帰り道。最近は忙しくてなかなかゆっくりと話せていなかった寺坂くんと、一緒に下り坂を歩いていた。前の方には渚くんやカルマくんたちの集団が見える。さすがのカルマくんも、私たち二人をそっとしておこうと思ったのか、その微妙な気遣いはありがたく受け取っておいた。


「新設校だからね、どんなものなのかもわからないけど」
「科目は?理数系だけか?」
「あと英語。理系こそ英語は重要みたいだからね。莉桜とか愛美に専門英語の読み方教えてもらったりしてるよ」
「ふーん...高校からそんなもん解かされるのか」
「なんだろ?博士課程に進める人を育てるのがスローガンの高校みたいだよ」


高校からすでに大学進学後のことまで考えさせられるのは少しばかり億劫なものではある。だけど逆に考えれば、今の時点でそこまで見据えることができるのはいい事なのかもしれない。狭まった視点だけでは、中々進む事もできないだろうし。


「...離れ離れになるな」


寺坂くんからまさかそんな事を聞かされるとは思っていなかった私は、思わず足を止めて、彼の手を握ってしまった。
いつもは恥ずかしくて手を繋いだりなんてしないのだけど、驚いたのか寺坂くんも、私の方を振り返った。


「でも、迎えに来てくれるって...」


高校にいっても、迎えに行くわ。

いつだったか彼は、そういってくれた。それを思い出したのか、寺坂くんは口角をゆるりとあげると、私から手を離し、そしてまた手を握って来た。次は、ちゃんとした繋ぎ方だ。


「当たり前だろ。高校も、進む道もちげーけど、どこにいっても迎えにいく」
「約束?」
「あぁ」


約束だ。

彼はそう言うと、くるりと振り返り、歩き出した。彼の手に引っ張られる形で私も歩き出す。少しだけ肩越しに見えた彼の頬が赤いのは、寒さのせいだろうか。いや、私の頬もあつくなっていた。きっと、寒さのせいなんかではないのだろう。




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