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クラス全員で学校へ続く道を走った。道の突き当たりに着いた時、全員が思わず足を止める。自衛隊の人達がそこに通せんぼをしていたからだ。


「!?何だ君たちは!」
「通せよ!生徒だよあの教室の!」
「行きたいんです、バリアの中...殺せんせーのところへ!」


無理やりにでもいこうと体を前に押し出せば、自衛隊達によって押し返される。肩を強く掴まれたせいかすこし痛い。その時、烏間先生がやってきた。焦ったような顔をして声を張り上げている。


「やめろ、生徒達に手荒くするな!」
「烏間先生!何スかあれ!」
「私達何にも聞いてないよ〜〜」
「しかもあの声明じゃ、殺せんせーが全部悪いみたいな...」


皆が思い思いに言葉を口にした。
殺せんせーのもとで勉強を、たくさんのことを学んだ生徒の私達からすれば、あれはとんだ嘘っぱちだ。私も思わず胸元を掴む手を握りしめて、烏間先生の言葉を聞いた。

烏間先生でさえ、この計画は知らなかったようだ。


「あの声明は、君らの今後も考えてのことだ。脅されたといえば無神経な詮索を受けずにすむ。全員揃ってるなら丁度いい。口裏を合わせるんだ!」


こんな屈辱的なことがあるか?誰よりも尊敬して大好きな殺せんせーを悪者扱いになんて、ここの生徒の誰がしたいだろうか。皆口を噛み締めながら下を向く。


「納得できません。殺せんせーと会わせてください!」


メグがクラスを代表してそう声を挙げた。


「だめだ。行って人質に取られたら事態が悪化する」
「人質!?そんなこと、殺せんせーがするわけ...」


ひなたがそう言ったとき、どこからともなく大勢の人がやってきた。カメラやマイクを持っている、どうやらマスコミのようだった。
マスコミは無神経にシャッターを光らせ写真をバシバシ撮ってきた。


「怪物に暗殺の真似事を強要された件については!?」


デリカシーのない質問をよくもまぁこうつらつらと。私は若干イラつきを覚えながら、声をあげようとした。そのとき、ひなのが涙を流しながら、皆が思っているほど殺せんせーは悪い人じゃないんだと思いを叫んだ。だけど、一人の子供の誠実な思いでさえこの人達にとったらネタになるらしい。小さい声で、この子を寄りで撮れとカメラマンに言っている記者の声がきこえた。

私は思わずひなのの腕を取り、彼女の顔が写らないように自分の背中をカメラマン達に向かってかばった。
それを見た磯貝君が、皆一旦帰るぞと全員に言って、走り出す。私はひなのの手を握りしめて、皆のいく方向へ足を走らせた。










全員で走り出して逃げた場所はどこかの駐車場。このあとどうするかとクラス全員で話し合う。全員一致なのは、このまま終わっていいはずがない、だった。その通りだと思ったため、私も携帯を取り出し律を起動し、磯貝くんの隣に立って口を開いた。


「手分けして周囲を偵察するのはどう?」
「ああ、新稲の言う通りだな...。夜にまた集まって作戦会議しよう!」


磯貝くんにそういえば、彼も同じように頷いた。全員にそう言って皆も顔を引き締めて、コクリと首を縦に振る。思い思いに走り出す皆の背中を見て、私の手を握ってきたのは寺坂くん。
彼を見上げて、私も同じように手を握りしめた。


「いくぞ」
「うん」


私たちも、走り出す。殺せんせーを助ける方法なら、沢山計算できるはずだから。










「皆の偵察をまとめると、バリアの周囲には隙間なく見張りがいるってことだな」
「マスコミ、自衛隊...殺せんせーと外部の接触を遮断したいのは確かだろうね」


前原くんと竹林くんの言葉を耳に通す。自分の頭の中にその状態をメモして、私も自分の考えを言った。


「多分、明日になればもっと人は増えると思う」
「新稲ちゃんの言う通りだね。今日の夜にでも強行突破でしょ」
「そうだな」
「その後にちゃんと世間に説明しようよ...!」


全員に希望が見えてきたその時、私たちの目の前は真っ暗になり、手を後ろに縛られた。どうやら捕まったらしい。あまりのことに驚きを隠せないままでいれば、車に乗せられ乱暴な運転で走らされる。

どれぐらい乗っていたのかはわからない。どこかに着いた後には、私たちは乱暴に引っ張られ連れて行かれた。


「全員無事に保護しました、司令官」


英語で話しているのが聞こえる。目元を隠されていた布を剥がされ、周りを見れば図体のでかい男性が数人いた。


「...ここは?」


神崎ちゃんが聞けば、司令官と呼ばれていたであろう日本人の男性が口をひらいた。彼が言うにはこうだ。

日本政府の暗殺が完了するまでは、私達はここで保護することになっている、と。


「わ、私達はそれでもいいから殺せんせーを殺すのを待ってください!」


原ちゃんが叫んだ。私も彼女の後に続けた。


「殺せんせーが爆発するのは1%以下です!殺す理由はないはずですよ!」
「子供にはわからんだろうが、1%でも100%でも世間は殺せと言うだろうさ」


この人はそのあとに、こうともいった。

殺せんせーの前世は残虐な殺し屋だった。今まで殺された人のことも考えろ。ようするに、自業自得なのだ、と。

はぁ?この人は何を言ってるんだ。いらつきが頂点に達しそうになった時。





「あのタコをごもっともな正論でかたるんじゃねぇ!!」





寺坂くんがその男の顔に蹴りを入れて、叫んだ。




「どうやら君たちはあの怪物に完全に洗脳されてるようだ」


この中で一番の手練れであろう男がそう言った後、私達は全員部屋に連れていかれた。私服も没収。白い服を渡され、まるで囚人のように同じ部屋に全員で監禁されることになってしまった。



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