2
「私服没収しやがって」
「武器の仕込みを用心したんだろ。まるで囚人だ...」
全員白い服に着替えさせられた。クラス全員が入るほどの大きさの部屋には、テレビと自動販売機、ソファーに机があるだけ。
「ここで...殺せんせーが殺されるのをポケーっと見てろっての?」
電源の入っているテレビからはニュースが流れていた。朝撮られた私達の姿に加えて世間からのコメントだ。
私は愛美の隣に座りながらそのテレビを眺める。ぼーっと見ていてもムカついてくるようなその内容に、思わず苦笑をこぼした。
何も知らない人たちから、なぜ私達はこうも可哀想な人間扱いされなければいけないのだろう。
その時、扉がバンと開かれて中に入ってきたのは烏間先生だった。
全員が立ち上がる。
「...おねがいです出してください」
烏間先生に向かって口を開いたのは渚君だ。
「行かせてください、学校に」
「そーすよ!烏間先生ならここから俺ら出せるでしょ!」
皆してそういえば、烏間先生は黙って首を横にふり、重々しく言葉を続けた。
「君らが、焦って動いて睨まれた結果がこの監禁だ。こうなっては俺もなにもしてやれない。行きたければむしろ待つべきだったな」
烏間先生の言葉は重い。私達を拘束したのは傭兵軍団だったらしい。そのリーダーを務める神兵と呼ばれるホウジョウという人は一番強く、烏間先生の3倍は強いと彼は言った。
「...だからもう諦めろ」
そう言われて誰が諦められる?それは皆同じだろう。
全員を代表するように、渚君が大きく声を上げた。
「いやです!殺せんせーと、話してないことがたくさんある!やりたいこともたくさんある!だからお願いです、いか...!!」
彼の言葉が途中で消えたのは、烏間先生が渚君の胸ぐらをつかんだからだ。
「よく聞け渚君。俺を困らせるな、わかったか!」
渚君の胸元から手をはなし、彼を床に置いた烏間先生に、カルマ君の言葉がかかる。
「無駄だよ渚。結局のとこその人も社会人なんだ。いざとなったら保身のために上の命令に従うだけ」
「...その通りだ。地位がなければ、肝心な時に誰も守れない。俺自身の信念に基づいても、やはり奴は殺すべきだと考えている。君らも三日くらい頭を冷やして考えるんだな」
烏間先生はそう言ったあと、扉をしめて部屋を出て行った。
「くそっ烏間のやつ!ここ一番で見捨てやがって!」
寺坂くんが椅子を蹴り上げた。それを呆然と床に座り込みながら見ている渚くんが、考え込みながら口を開いた。
「寺坂くん、烏間先生は今...俺を困らせるなってはっきり言った」
「...?だから何よ」
「こうも言った。5日目以降は外側の警備に隙が生まれる。山の中には少人数の精鋭が潜んでいて、そのリーダーは烏間先生の3倍は強い」
彼の言わんとしていることがわかったのか、クラスの皆が息をのんだ。
「前に烏間先生話してた。もしも俺が困れば、迷わず君らを信頼し任せるだろう、って。だから困らせるな、は、僕らを信頼して任せる、だと思う」
俺と君らの立場は違う。けど可能な限り情報をやる。あとは君らの意思を尊重する。
きっと、烏間先生はこう伝えたかったのだろう。立場がある人間だから、ああいう手段を取るしかなかった。私はさっき烏間先生が言っていたことを思い出し、頭の中で反芻した。
「だから皆で考えて整理しようよ。僕らがどうしたいのか。僕らになにができるのか。殺せんせーが、どうしてほしいのか」
そのあと、クラス全員で話し合いをした。皆が一人一人思い重いに言葉を言った。結局皆が思ってることは一緒なんだ。
「わかった、まとめるとこう。第一に、殺せんせーに本心から死んで欲しい人はいない。第二に、私達は暗殺者で、必殺にかけたこの一年を赤の他人に踏みにじられるのは、いやだ。」
私が皆の思いをまとめたことを言えば、全員が首を縦に振った。
「てことはよ、まず俺らはなにがしてーんだ?」
「決まってるよ。殺せんせーも、やりたいことは一緒だと思う」
寺坂くんと矢田っちの言葉が部屋に響いた。
会いたい。殺せんせーに会いたい。
会わなきゃ何も終わらない。
「そうだね...烏間先生はこう言ってた。三日くらい頭を冷やせって」
全員の顔を、見ながら口を開く。三日くらい頭を冷やせと言うことは、つまり三日は猶予があるということだ。ソファーの元に歩み寄り、机の上に手を置く。
「考えよう。もしもここを出れた時、どんなふうにでも動けるように作戦を考えよう」
今まで1年間指揮をとってきた。指揮者の私が筆頭に考えていかないと。
「そうだな」
磯貝君の言葉が部屋に響く。全員の顔を見上げれば、皆顔を引き締めて顎を引いていた。やる気満々の姿だ。
「やるぞ」
「おお!!!」
磯貝君の言葉を口火に、全員で叫ぶ。3Eの団結力、なめんなよ。
prev next
ALICE+