2

速水さんと千葉君の狙撃により2人を確実に麻痺させる。敵の2人が倒れたところで、原ちゃんに合図を送りもう1人の上にダイレクトアタック。


ボキボキグシャァ!!!


なんとも言えないグロテスクな音に思わず足を止めてしまった。


「おい、今の音死んだんだじゃね?」
「失礼な、優しく包んだだけよ」


吉田君の言葉に頷いてしまいそうになったけど慌てて頭を横に振った。
内線が繋がってる首元に口を寄せてカルマ君に話しかける。倒れてる人たちはぐるぐるに簀巻きにするために、ポケットに入ってたテープを吉田君と原ちゃんに投げた。


「カルマ君、そっちどう?」
『んー?人間エサ作ってる』
『ギャー!!辛い酸っぱい苦いくさいしみるきしょいいいいい!!!』


英語で何か叫んでる人がいる。苦笑を通り越して思わず真顔になってしまった。


『新稲ちゃん、悲鳴を餌にさらに増援をおびき寄せたいと思う』
「あー、だね。あと2、3人は始末できるかも。律、ドローンで何観れる?」
「尾根づたいに三人ほど接近しています。それとモミの木に固定機銃が配備されてます」
『モミの木に固定機銃ね、了解。山葡萄の茂みからマテバシイ密集地抜けるルートは?』


カルマ君の言葉に律が画面に起動したのは私達が開発した多機能式ツール。カルマ君も開いているのかそこにマークがピコンピコンと置かれた。


「はい、そちらでしたら大丈夫です」
『新稲ちゃん』
「おっけー」


カルマ君が寺坂君に指示を出すのを聴きながら、吉田君達を率いて私達もそっちに向かう。愛美のつくったであろう煙幕に巻き込まれる敵の背後にまわり、全員で雁字固めをした。

倒れてる敵はぐるぐるにして身動きが取れないようにしておく。人を殺すことは私たちはできないから、これが3Eの暗殺スタイルだ。


「新稲のおかげで色んなところに罠置いてるからなここ」


思わず聞こえた自分の名前に後ろを振り向けば、網にかかった敵が空中でぶらぶらしていた。岡島の言葉に、人間を予想したものじゃないけどと一言かけてから、スタンガンを持っている皆に合図をだしてビリビリとさせた。

皆で前にむかって殺せんせーに近づいていく。一致団結しながらのこの動きは、1年間皆でやってきたものだ。負ける気がしない。

その時、どこからともなく現れた男はホウジョウ。彼は人間離れした動きで空中を回りながら木の上に立っていた。


「失礼した。君達の力をあまりに低く見積もっていた。これより、本当の私を教授しよう」


彼はそう言うとメガネをとろうと手を動かした。その隙を狙って速水さん千葉君に合図を出し麻酔針を打たせる。それを手で掴んだホウジョウに思わず息を呑み、すぐにカルマ君と目を合わせた。

彼もこっちを見ていて、こくりと頷いた後武器を片手に飛び込む。ここまでの時間、おそらくコンマ2秒。







『なぁ、ホウジョウはどうやって倒すんだよ』




作戦を立てた時全員が思ったことはホウジョウをどうするか、だった。ほかの敵はどうにかなるとして、このホウジョウは烏間先生の3倍は強い。私達でどうにかできる敵じゃないことは一目瞭然だった。

だけど、今回作戦を立てた私とカルマ君は共通で思ってることがあった。なによりもホウジョウを倒す上で大切なことを。


『そんなの一番簡単だ』
『は?』


カルマ君の言葉に、皆が疑問を口にした。私はそれをちらりと見て、机に広がった紙をまとめて立ち上がり同じように首を縦に振った。


『ホウジョウを倒すために大事なこと、それは』








本気を出させないこと。







「一撃離脱だね、牢屋でみっちりやったように」


ぶっ飛ばされたカルマ君が起き上がりながらそう言う。あの部屋の中で、私たちは何十回もこの練習をしたんだ。私も自分の手に握る武器を強く握りしめ、足を運ぶ。強く地面を蹴り一撃だけ浴びせてすぐ離れる、ただこの繰り返しをするだけ。

竹林君があいつの銃を奪い取った。その隙を見逃さずに、律に命令を送り麻酔針を打たせる。うまい具合に当たったそれに一瞬気をそらせた瞬間、渚君の猫騙しが綺麗に決まり、そしてカルマ君が決めのカカト落とし。

倒れたホウジョウに、渚君とカルマ君がかっこよくハイタッチを決めた。なんだかそれが、少し微笑ましく見えた。


「ちゃんととどめ刺せくそったれ!かっこつけてハイタッチとかしてんじゃねえ!新稲、テープ!」
「はいはい」


それでもまだ動いてるホウジョウに全員で銃を撃ったりぼこぼこ叩いたりしてる。寺坂君に名前を呼ばれてポケットの中に入ったテープを取り出し、わらいながら返事をした。カルマ君と渚君は少し恥ずかしそうにしていた。


「よしいくぞ、バリアの中さえ入ってしまえば殺せんせーの勢力圏だ!」


全員で走り出す。敵は全員倒した。あとはもう、殺せんせーに会うだけだ。

バリアのような光が見えた。一人一人入って、毎日通った私たちのきょうしつに迎えば、そこには殺せんせーがいた。


「音だけでも、恐ろしい強敵を仕留めたのがわかりました。成長しましたね、皆さん」


殺せんせーが笑顔で私達を迎えてくれた。


「殺せんせー!!!!」


全員が泣きそうな顔で殺せんせーに走り寄る。思わず出そうになる涙をおさえて、私もぐっと地面を蹴り殺せんせーに抱きついた。もちろん手には、対殺せんせー用ナイフを持って、皆と同じように、わらいながら。

prev next


ALICE+