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さっきのガスを吸って足をガクガク言わせながらやっとの思いで立っている烏間先生。
ピアノを弾いて時間を稼いでくれているビッチ先生、完全防御形態に入ってしまった殺せんせー。頼りになる大人はもういない。

今まで痛いほど思い知らされた。プロの大人たちの経験と知識はすごい。そんな大人たちが敵で、これから先にもいると考えると、本当に僕らの力だけで勝てるのかと考えてしまう。


「いやぁいよいよ夏休みって感じですねえ」


そんな緊迫感のある中、のんきにそういうのは我らが担任の殺せんせー。
その一言に全員切れて、殺せんせーを持っていた僕はみんなにふりまわせ!!と命令されたため思い切り振り回してやった。


「よし寺坂、これねじ込むからパンツ下ろしてケツ開いて」
「死ぬわ!!」
「私も見たくないんでやめて...」


カルマくんが嬉々としてそう言って、新稲さんが両手で顔を覆いながら恥ずかしそうにやめてくれという。


僕はもういちどカルマくんから殺せんせーを返してもらい、何が夏休みなのかと問う。


「先生と生徒は馴れ合いではありません。そして夏休みとは先生の保護が及ばないところで、自律性を養う場でもあります。大丈夫。普段の体育で学んだことをしっかりやれば、そうそう恐れる敵はいない」


殺せんせーの教師としての特徴は、体育だけは容赦がない、というものだ。
きっと、これも先生の体育の授業の一環となっているのだろう。


慎重に、慎重に、みんなでゆっくりと先に進んでいけば、次に待ち構えていたのは窓に寄りかかっている殺気に満ちた雰囲気を持っている人だった。


「...つまらぬ」


彼は窓を素手で叩き割ると、そう一言言った。


「足音を聞く限り、手強いと思えるものが一人もおらぬ。精鋭部隊出身の引率の教師もいるはずなのぬ...だ」


恐ろしい雰囲気だけれど、うん、なんといか、怖くて誰も言えないけれど...



「ぬ、多くねおじさん?」


と、みんなが思っていたことをカルマくんがそれはそれはいい笑顔で言ってくれた。


「ザコばかり、一人でやるのも面倒だ。ボスと仲間読んでみな殺しぬ」


彼は携帯を取り出して、どこかに連絡をしようとする。
すると、いつの間にそっちに行っていたのかカルマくんが観葉植物片手に振り回し、その携帯を叩き割った。


「中坊とタイマン張るのも怖い人?」


カルマくんがニヤリと笑いながらそういう。
烏間先生が思わず止めようとするけれど、殺せんせーがそれを止めた。

その理由が、顎が引けているから。

カルマくんはいつも、余裕をひけらかそうと知れ顎を突き出して上から見下ろす構えをしていたけれど、今のカルマくんは、目をまっすぐして正面から相手の観察をしていた。

しかも、相手の攻撃を全て避けたりさばいたりしていて、身のこなしが軽やかだ。
途中、ガスを浴びてしまったんじゃないかと思った時は焦ったけれど、やっぱりそこはカルマくん。自分も同じようにガスを浴びさせて、腕を掴みうまい具合に相手を地面に伏せさせていた。

その背中めがけて、みんなでジャンプをして突進する。





「なぜだ...俺のガス攻撃...お前は呼んでいたから吸わなかった。俺は素手しか見せていないのに」


みんなで縛って横に伏せさせている相手がそういう。
カルマくんは、その前にあぐらをかいて座り、「あんたのプロ意識を信じたから、警戒してた」そう一言言った。

カルマくんはちょっと、いい感じに変わったな、と思う。
期末試験の時、新稲さんに言われた言葉が、今ならなんとなくわかる。

カルマくんは、全部できるから余裕が人とは違う。

それは、敗者の気持ちを知らないからだ、ということだったんだ。

一度敗北したカルマくんはそういう気持ちを理解して、それを自分の糧にしたんだ。


でも、相手の鼻にわさびやからしを詰め込んでいる姿を見る限り、そんなに変わってないかもしれないと思った。





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