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烏間先生は何も言わない。
彼女はプロフェッショナルだから、情けは無用だ、と。
烏間先生は厳しい人だ。自分にも、他人にも。とても厳しい。特に、一人前の大人には。


「先生これからブラジルまでサッカー観戦に行かねば」


殺せんせーは顔をサッカーの柄にして窓からマッハで飛び出していった。あんなにサッカー好きだったっけ?と言う皆の疑問に私と愛美は椅子に座りながら苦笑して聞いた。


「このままビッチ先生は消えてしまうのでしょうか...」


愛美は顔を曇らせてそう言う。どうなのだろう。さすがにそれはないと思いたいけれど...私は何も言わずに愛美の頭をそっと撫でた。


「まさか、こんなんでバイバイとかないよな...」
「そんなことはないよ。彼女にはまだやってもらうことがある」
「だよねーなんだかんだいたら楽しいもん」
「そう、君たちと彼女の間には十分な絆ができている。それは下調べで確認済みだ。僕はそれを利用させてもらうだけ」


私たちの会話に普通に入ってきたその人を、私は知らない。
平然と教室に入ってきたその人は、ビッチ先生のためにと買った、あの花束のお花屋さんだった。


「僕は死神と呼ばれる殺し屋です。今から君たちに授業をしたいと思います」


その人は、教壇に立ち、笑顔でそう言った。


「花はその美しさにより人間の警戒心を打ち消し人の心を開きます。渚くん、君たちにいったようにね。
でも花が美しく芳しく進化してきた本来の目的は...」


彼がそう言っている間に、律の元に一通のメールが届いた。


「律さん、送った画像を表示して」


律はそっと私の方へと目配せをした。私はそれに対してコクリと首を縦に振り、見せて、と一言言った。


「虫をおびき寄せるためのものです」


律が見せた画像には、ビッチ先生が縄で縛られて横たわっているものだった。
それを見て全員愕然とする。

彼は黒板にビッチ先生の絵を描き、そこに線を引き延ばしていく。
ビッチ先生を助けたければ、先生には言わずに私たち全員で指定する場所に来い、とのことだった。
もしも来なければ、小分けにして全員に平等にに行き渡らせる、と。

ちらりと隣の席にいるカルマくんを見れば、警戒したいのに警戒できないのか、珍しく焦りを見せていた。


寺坂くんたちが警戒しながらその人に近づく。全員立ち上がり、彼らを見つめていれば、その人は「怖れるなかれ、死神が人を刈り取るのみだ」そう一言言って、言葉通りこの場から消えていった。



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