01


それは突然起こった。
いつものように部活の練習を終え、ボールなどを片付けるために倉庫に入り、主将である赤司君が鍵をかけようとした時。
それは起こったのだ。



「キャー!!」

「さつき!!」



青峰君と桃井さんの叫び声。
僕は驚き、体育館近くにいた緑間君と黄瀬君が体育館に入って行くのにつられて走り出してしまった。
赤司君と紫原君が僕の名前を呼んだ気がするが構わず体育館へと入った。

そこには、





「テツ!!」

「テツ君!!」

「...!!」



見た事もない(四方八方に伸びる触手に顔がないようなよく分からない)生物が天井に張り付いていて、僕のすぐ真上にいた。

腰が抜けたのか床にへばっている桃井さんの肩を支えるように青峰くんがいた。
なんだかんだいってこういうときは幼なじみとしてたよりになるのだな、と冷静に思ってしまった。


「黒子っち、あぶない!!」

黄瀬君の言葉ではっとし、上をみるとその生物が触手をこちらにのばしていた。
どうしようなどと考える間もなく、どこからともなくボールが飛んで来る。


横をみると、緑間君がボールを投げたようで、こちらを見据えていた。

「ナイスっス緑間っち!!」

「はやくこちらにくるのだよ、黒子!!」

「はい」

一瞬の隙をねらって、その生物から逃れるために緑間君、黄瀬君とともに二人のほうへと駆け寄った。


「大丈夫ですか、桃井さん」

「う、うん..」

「あいつ、変な液体はきやがって、ほら」



青峰君のいうように桃井さんの横を見ると、床がまるで解けているかのように蒸気が出ていた。
これにもし桃井さんがあたっていたら、とかんがえるとぞっとした。


「てか、あれなんなんすか!?」

「んなのこっちが知りてーよ!!」

「とりあえず、青峰、桃井をおんぶしてはやくここから去るのだよ」

「あぁ」



気持の悪い生物はまるで桃井さんを狙っているかのようにこちらに触手をのばしてくる。
桃井さんをかばっている青峰君が今はとても危ない。
僕たちでなんとかボールをなげたりなどするが、全くきいていないようだ。

「(どうすれば...)」


一体何がなんなんだかわからなくなった時。
その生物が突然倒れた。



「「「「「....!!」」」」」

生物の顔なのかよくわからない大きい所にきれいに蹴りをかましていたのは、僕たちがよく知る赤髪をなびかせる赤司君だった。
生物が倒れたと同時に床に着地した赤司君は僕たちを一瞥する。



「大丈夫か、特に桃井」

「え」

「あ、赤司...?」

「言いたい事は分かるが、今はそれどころではない。すこし下がっていろ」


赤司君が言い終える前に、その生物は既に起きあがっており赤司君にその長い触手をのばしかけていた。


「赤司君!!」



僕が叫ぶと同時に、その生物は勢い良く壁へと衝突した。
もう状況を理解する事もままならない。
どうして彼がそこにいて、さも普通のように赤司君と話しているのかも。



「紫原君!!」

「赤ちーん」

「あとは任せたぞ、敦」

「りょーかーい」


赤司君はそういうと僕たちをその生物とは反対の方へと誘導し、避難させた。
緑間君が説明をしろと叫ぶが、後でまとめてとしか言わない赤司君に、みんな黙っている。
それより、紫原君をひとりにしていいのかと問う黄瀬君に、そうだと目をやれば、


「はいしゅーりょーう。あー疲れた」


その生物は全く動きもせず、そこに横たわっていた。
一体何が起こったのか、全く理解する事もできずに僕たちはただ呆然と二人を見るだけだった。


「赤ちーん、どうすんの?」

「この件についてはマギに任せた方がいいだろう。桃井の事も気になる」

「わ、私?」

「あぁ。悪いが、お前たち全員に着いて来てもらおう」

赤司君はそういうと体育館を出て、歩いていってしまった。
未だに状況を把握できていない僕たちはどうすればいいのか、と紫原君を見る。


「まぁ、ついてきてよ。桃ちんは峰ちんに頼んだよ」

「おぉ..」

本当にいつもの様にお菓子をほおばりながらゆっくりと歩く紫原君に、何も考えずに僕たちはついていった。

これが全ての始まりではなく、ただの通過点に過ぎなかったという事も知らずに。



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