先輩から見る二人


隣の研究室がなにやら騒がしい。
同じく開発部門にも所属している自分の所属する隊の隊長である小早川に話を振った。


「颯、なんかうるさくね?」

「...雪か?」

「あいつが?」


自分と同じ隊の隊員である雪が何か騒いでいるのか、颯が雪の名前を口にすると、はぁ、とため息をついてつなぎの服の上の部分を脱いで腰に巻く。

研究室を抜けると暑いからな。俺たち技術開発チームの全員はいつもラボを抜けると大体そんな格好になっている。


「冬島さん、少し抜けます」

「あー。多分当真もいるな」



手元にある細かい部品を覗き込みながら颯にそう答える冬島さん。
A級2位の冬島隊の隊長さんだ。
隊としてはライバルではあるけれど、俺たちの研究チームは冬島さんを筆頭にしたチームであるため、基本的によく冬島さんと行動を共にすることが多い。


雪と当真。この二人の関係は見ていてそれはそれはじれったいものでもあるし微笑ましいものでもあるし羨ましいと思うものでもある。
年下の男が頑張って年上の女に振り向いてもらおうと頑張っているところはとても微笑ましい。

雪は俺たちからしたら年下だけど、高校生から見たら雪も十分大人に見える歳なのだろう。


「あの二人本当になんなんだ」

「ぷっ」


そういった颯に思わず笑いをこぼせば、ジトーとした目で俺を睨む颯。


「...お前も来い、拓」

「へいへい」


睨んでいたパソコンを閉じて、同じようにつなぎを腰に巻いて颯と共に研究室を後にする。
冬島さんが後ろから任せたぞ〜という声が聞こえたがそれを無視して、すぐ隣にある研究室に入れば、予想通り当真が雪の後ろに陣取っていた。


「おい当真〜」

「ん?あぁ、小早川さんに高梨さんじゃん。どしたの」

「どしたの、じゃねーよ。お前らの声隣にも聞こえたぞ〜」

「え、まじっすか」

「まじっす」


先輩たちに挨拶をしながら奥にいる二人の元に足を進める。
薬品を使って実験をしているわけではないらしい、データをまとめているだけなのか雪の手元には紙が大量にあった。


「お疲れ様です隊長、拓さん」

「おとなしく実験はできないのか、お前は」


紙から顔を上げて小さく頭を下げる雪に颯が隊長らしく小さく頭を小突いてしかる。
それをかっかっと笑いながら見る当真には俺からの説教。


「当真もな、時と場面考えてこいつにアタックしろよ〜」

「はーい」


まぁ、危ない時に行動をするやつではないことは俺も颯も研究室のメンバーもみんなわかってるから優しく見守っているんだけど。

「大人しく抱きついとけ、当真」

「小早川さんがそう言うならそうしとく」

「え、隊長怒ってくださいよ〜」

「知らん」


まさしく一刀両断。
バシッとそう言うと、俺の名前を呼んで行くぞという颯に俺も慌てて足を動かす。


「じゃあ後でミーティング忘れんなよ、当真も、冬島さんのとこ後で行けよ」

「はーい」

「ウィース」


最後にちらりと見えたのは、当真腕に雪のでかい胸が乗っかっているところで。


これがとてつもなく羨ましいんだよな!!!!と隣の颯に言えば、黙って脛を蹴られて一人廊下でうずくまることになるまであと1分。もし俺が迅みたいなサイドエフェクトを持っているんだったら、こんなやましいことは言わなかったのに。



(小早川隊には美男子が二人所属しています)


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