「ね、ちょっと竜馬...ストッ...ダメって言ってるじゃん...!!」

「うるせー聞こえねー」



毎日の日課であるなまえと一緒に帰るため、俺はいつも通りにあいつの学校の近くの交差点でなまえが来るのを待っていた。
いつもなら急いでやってくるのに今日ばかりは遅くて、気になった俺は校門の方まで近寄ってみた。すると、なまえが知らない男に手を掴まれていて。心の中でよく分からない黒いモヤモヤが出てきたのがわかった。
とりあえずあの男からなまえを離して、こいつの彼氏だと啖呵を切れば、あの男はびっくりしたように口をあんぐりと開いていた。あれは本当に傑作だった。



「竜馬ってば...!!」

「いいから黙れって」



あいつと俺は違う高校に入った。
それでも変わらず中学三年の時のまま俺と付き合っているこいつに、別に不安なんてものはない。とも限らない。
中学の時より大人っぽくなったなまえは口には言わなくても可愛くなったし、胸も変わらず大きいままだし。
もしかしたら今日だけじゃなく、何回かああいう場面に合っているのかもしれない。

そう思うと、言葉よりも身体が止まらなくなった。

いつものように俺の家で勉強をすると言って上がり込んだなまえの後ろ姿を見て、勝手に手はあいつの腰に回っていたし、口はあいつの、なまえの唇を気づかぬうちに塞いでいた。



「ねぇ...!!ダメ...!!」


なまえを床に押し倒す。
スカートは足の付け根ギリギリまで捲くられて、ブラウスのボタンもほぼ外れた格好だ。
ごくりと生唾を飲み込む。両腕を片手で押さえ込み床に縫い付ける。上からなまえを見下ろせば、嫌だ嫌だと言いながらも結局は言いくるめられて受け入れたなまえの口から何度も息が出入りをする。


「...お前さ」

「な、に...もう...」


薄っぺらなキャミソールだとかいう布のからブラジャーがうっすらと見える。
パンツなんてほぼほぼ丸見えだ。それでもキスで止めている俺をなまえは讃えるべきだろう。


「なんですぐに断らなかったんだよ」

「え...?」



嫉妬してるだなんて、気持ち悪い。
男として恥ずかしいし、自分の彼女がモテるんだと考えればいいことなはずなのに。
なまえに限って浮気なんてしないだろうし、そんなに俺が不安になる要素もないはずだ。


それでも。


「...どう断ればいいのか、考えてて...」

「彼氏がいるって素直に言えばよかっただろうが」



一番に俺の名前を言ってくれればいいのにと。
そう思ってしまうことはいけないことなのか。



「...ごめん。言おうと思ってたんだけど...」



申し訳なさそうに眉をひそめてごめんと言うなまえ。
なまえは俺との目線をそらして、顔ごと左を向く。俺はその顔を追いかけるように右手をなまえの顔につき、覗き込むようにもう一度顔を近づけた。



「...次からはすぐに、竜馬と付き合ってるっていう...怒っちゃった...?」


うっすらと涙が浮かんでいた。
下唇を噛み締めながらそう聞くなまえに、もはや黒い感情なんてものはどこかに消えていた。

両手を縛り付けていた左手を離す。
そのままなまえの目に左手を添えて、そっと涙をすくってやった。
一瞬びくりと体を揺らしたなまえに、また違う感情がふつふつと湧き起こる。


「俺もやりすぎた、悪かった」


醜い嫉妬を感情のままに押し付けて、なまえを泣かせてしまった。反省の言葉を口にして言えば、なまえはふるふると首を横に振って、自由になった左手で俺の胸元のシャツをぎゅっとつかむ。
昔からこいつは、何かあると俺の服をつかむ癖があった。その手に自分の左手を重ねて優しく服から引き離す。



「竜馬...?」

「わりー」


恐る恐る俺の名前を呟いたなまえにもう一度謝り、顔を近づける。
そのまま唇を塞ぎ、時々漏れる息に頭がクラクラするのを感じながら、結局俺は感情のまま手を休めることはしなかった。










「嫉妬なんて竜馬らしくないね」

「あ?」


あぐらをかいた俺の足の上で、ブラウスのボタンを一つ一つ締めていくなまえ。
後ろから優しく抱きしめて、その行為を上から見下ろす。


「...悪かったって言ったろ」

「ううん、別にいいよ。ちょっと嬉しかったもん」


なまえの肩に顎を乗せる。
俺の顔をチラリと見たなまえはクスリと笑うとボタンをしめ終えた左手で俺の頭を撫で始めた。


「今度からはちゃんと竜馬の名前言うから、ね?」

「ん」


まるで俺の保護者のようにそう優しく言い聞かせるなまえ。
確かにあの時は俺の保護者やらお守りやらなんやらと言われていたが、今じゃ俺の彼女だしそもそもこういう時は俺が上になるんだから、もうそれは関係ないだろ。
いつまでも保護者気分が抜けきらないのかわからないが、なまえは何が面白いのかいまだに笑ったままずっと俺の頭を撫でる。


まぁそれでも、俺のことを見てくれるのであればそれでいいか、と。
俺は内心喜んでいる気持ちに蓋をして、そのやってくる優しい感触に身を委ねた。



 
ALICE+