「貴様が異星人だとしてだ、ではどうやって地球この星に―――神殿へと来た」
「(そんなのこっちが聞きたいわ)」


思わず零れそうになる言葉をことははグッとこらえた。

火の国が”地球”から見て異星だということは置いておくとしてだ。何故地球へやって来てしまったのか。

木ノ葉の里が砂の忍に襲われことはは死にかけていたはず。とてもじゃないがあの瀕死状態では一歩も動けなかっただろう。
火事場の馬鹿力とでも言えばいいのか、死ぬ間際の抵抗として知らぬ間に瞬身の術でも発動させたのかとも考えられるが、あいにくことははまだその術を習得してはいない。

ぐるぐると考えを巡らせるも、自分がどうやってこの異星の地にやって来たのかがわからず、やがて一つの答えへとたどり着く。


「(もしかして私死んじゃってるんじゃ……?)」


自分の手を見つめる。砂の忍に殺されかけたというのにも関わらず傷一つ見当たらない。気分が優れないということもなくむしろ快調である。

悟飯が言うにはことはの負っていた傷はすべて癒したということらしいが、どれだけ優秀な医療忍者でも瞬時に傷跡さえ消すなんてできるわけがない。

ならば、いっそ「死んだ」と納得する方が早い気がした。

目の前にいる悟飯は、死んでしまったことはに与えてくれたご褒美として会わせてくれたに違いない。
神の神殿という単語を何度か聞いたが、なんだか”それ”っぽい単語ではないか。そう考えていると、


「ここは死後の世界じゃない」


「お生憎様だったな」とピッコロに告げられ「あ、じゃあ私まだ生きてるんだ」と納得したのち、ふとした疑問がことはに浮かぶ。


「(あれ、私声に…………。)」
「俺は読心術が使えるんだ」


「貴様の考えていることはすべてお見通しだ」と口角をあげるピッコロ。「あ、そうなんですか……」と思わず頷くも「いやいや」と首を横にふる。


「プライベートも何もないな……」なんて心の中で呟いたところで、この緑色の人物にはすべて聞こえていることだろう。

見た目といい読心術といい、ことはなんかよりもピッコロの方がよっぽど怪しいのではないか?
そう思った瞬間にギロリと睨まれてしまい「ひいゴメンナサイ!」と肩がビクッとはねた。(こ、怖い……)

そんなやり取りをしていた中で、静かに話を聞いていたデンデが「あ、あの」と手を小さくあげた。


「ことはさん……、に一つ聞いてもいいですか?」
「あ、はい」
「その、あなたが現れたとき、体は傷だらけで意識もなくて……、瀕死の状態でした」


「砂の忍に殺されかけたと言っていましたが、一体何があったんですか?」


「何があったのか」そう問うデンデに答えるべく口を開こうとするも、「あれ私砂の忍のこといつ話した?」とことはは首を傾げたが、デンデの見た目がピッコロそっくりなことから「あぁ……、なるほど」と納得する。
可愛い見た目に反し、ピッコロと同じく読心術を習得しているのだと理解しどうやらことはが今まで考えていたことは筒抜けだったのだと知る。

「す、すみません」と咄嗟にデンデは謝るが、この状況においては仕方のないことだろう。


「………もしかして悟飯君も読心術使えるの?」
「ボクは使えないですよ!」
「そ、そっか…………、」


「良かった……!」と心底ホッとしていることは。

いたって普通の女の子で悪い人物には見えない。デンデはそう思った。だからこそことはが傷だらけで現れた理由が気になるのだ。
例えことは事態に害はなくともことはのいた星が何者かに襲われていたのだとして、必死で逃げてきた彼女を追って悪い奴が地球へやって来るかもしれない。


「は、話逸らしちゃったね」
「い、いえ。大丈夫ですよ」
「ありがと。………何から話せばいいかな」


話を逸らしてしまったことを謝罪しつつ、どう説明しようかとことはは「うーん」とうなった。「そうだな、」


「私がここに来る前、木ノ葉の里で中忍選抜試験の本戦をやってたの」
「中忍選抜試験っていうのは、簡単に言うと忍者の昇格試験のことで会場は木ノ葉の里だったんだけどね」
「だからって試験を受けられるのが木ノ葉の忍者だけじゃなくて、他の里からも来てて―――」


本戦に残ったのは木ノ葉と砂の忍のみ。天才一族の生き残りと不気味な雰囲気を持つ二人が試合を始めたときのことを思い出し、ことはは唇をかんだ。


「………本戦の最中に、砂隠れの忍者が木ノ葉の里を襲ってきた」
「奴らの標的は私たち木ノ葉の忍者だけじゃなく里の住人全員だった」


襲われたのは里の忍だけではない、抗う術を持たない一般市民さえも砂の奴らは襲っていた。
対抗するべく砂の忍に向かっていったものの、実力の差からあっさりやられてしまったことを素直に話す。


「それで、あんなに傷だらけだったんですね」
「うん」


「………――――里の皆、大丈夫かな」


現火の国の長、火影は歴代最強と聞いている。上忍も特別上忍も里にはたくさんいて、皆強いのは知っている。伝説の忍の一人も里に帰ってきていたはずだ。
だから木ノ葉の里は大丈夫。そう自分に言い聞かせていても、思わず口から零れてしまった言葉。
会場で本戦を見ていた観客のほとんどが幻術の餌食になっていた。住人たちが無事に安全な場所へと非難したのかも確認できていない。幼馴染二人だってことはと同じようにボロボロになっているかもしれない。


「ッ…………――!」
「(ことはさん…………、)」


知らない間に肌色が白くなってしまうくらい力を入れて両手を握りしめていることはに気づいた悟飯。

ことはの身に起こってしまった悲劇を聞いて素直に再会を喜べる状況でないことは理解しているし、自分がどうにかできる問題ではないことも。「それでも、」


「(せっかく会えたのに…………、)」


数年をかけて出会えた大切な友達の悲しい顔を前にして、悟飯は「ボクにはどうしようもできないです。ごめんなさい」とは絶対に言いたくなかった。

とは言え実際悟飯には何もできないのは事実。ことはの言う木ノ葉の里を襲っている砂の忍の奴らを自らの手で倒せるならいいが、如何せん場所がわからない――。「あ!」


「どうしたんですか、悟飯さん」
ドラゴンボールだ!


突然声を張り上げたことを不思議に思うデンデに「神龍に願いを叶えてもらえばいいんだ!」という悟飯。

ことはも悟飯の言わんとしていることがわからず「?」と首を傾げると、悟飯は「あのですね、」と話し始める。「ドラゴンボールって言って七つ集めると願いを叶えてもらえる球があるんですけど、」


「それを集めて火の国に行けるようにお願いすればいいんじゃないかなって、」
「は、はあ…………、」


「なるほど……?」と言ったはいいものの、いまいち理解ができなかったことは。

曰くドラゴンボールという不思議な球を集めることによって願いを聞き入れてもらえるとのことだが、果たして本当にそんなことが可能なのだろうか。
まるで「百両で宝くじを買ったら確実に当たりますよ」そんなノリのような話だ。

他里の事情に詳しくないことはが「外の世界には色んな文化があるんだな」としみじみ思っていると「それは無理だな」と言うのが聞こえた。

それを言ったのはピッコロで、すぐさま「どうしてですかピッコロさん!」と悟飯が問いかける。


「セルとの闘いですでに願いはすべて叶えている。再び集められるまでにまだ一年はかかるだろう」


ピッコロのその言葉に「そ、そうでした……」と落胆する悟飯。願いを叶えたのはつい最近のことのはずなのに、どうやらすっかり忘れていたようだ。

一年も待っている間に、ことはの里はもっと酷い目に合わされるかもしれない。最悪壊滅だってあり得なくはない。
「一体どうすれば……!」悔しそうに顔を歪ませる悟飯だったが、もう一つ火の国に行く方法を思いついた。


「そうだブルマさん!ブルマさんに頼んで宇宙船を貸してもらえば、」
「どうだろうな。果たしてこいつの星に着くまでに何日かかるか……――――」


「ましてやどこにあるかもわからないんだ」そう続けるピッコロ。

確かに過去にピッコロやデンデの故郷ナメック星に行ったときも、サイヤ人の技術を借りて改造した宇宙船でさえ六日はかかったのだ。
今から火の国を探してもらい向かうとしても早々すぐには出発できない。なにより、


「貴様が火の国のニンジャで、里が敵国に襲われそのせいで傷だらけになっていたのは理解した。しかし、」


「―――例え悟飯の知り合いでも、どうやってこの神殿へとやって来たのかがわからない以上貴様を自由の身にさせるわけにはいかない」


鋭い視線でことはを睨みつけるピッコロ。それはまるで幻術にでもかかったような感覚であり、指一つ動かすことはできなかった。


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