02

「ミナコ先生……またやってしまったらしい。」

シーズンラストの世界選手権FS直前、ミナコ先生に携帯メールの画面を突きつける。

「……ハァ……あんたまたなの? 愛想つかされすぎ。ちゃんと好きとか愛してるーとか言えないの?」

「言ってるつもりだったんだけど……というか今シーズンは完璧に彼のために滑ってたもん。」

これから滑る"リストの愛の夢"は彼を思って振付けたし、彼を思って今シーズン滑り切ろうとしていた。

「アンタ…ほんと銀盤を降りたらサバサバしてて男らしいっていうか……男に生まれた方がよかったわね」

「すごいショック……でもしょうがない。結婚出来なかったらミナコ先生と一緒に老後過ごすからね!」

ミナコ先生の肩に頭を乗せて甘えてみる。ちょっと恥ずかしいけど私の心はズタズタ。ちょっと泣きそうなくらい。

「まったく。よしよし、もうちょいしたら身体暖めるのよ!」

ため息の後に頭をポンポン撫でられて、勇利に会いたくなってきた。彼はいま一足先に故郷へと帰っている。うーん、早く帰って彼の頭撫でくりまわしてあげたい!

「よし!もう大丈夫!彼のこともこのスケートできっぱり諦める!」

バッ!っと立ち上がって大きく伸びをする。
大丈夫、大丈夫。
銀色のあの盤の上に上がれば私は誰にも負けない。










(ごめん、輝羅々。君に好かれているか不安で自分に自信が無くなったんだ。
別れよう。きっと僕らはダメなんだと思う。
本番前にごめんね。頑張れ。応援する気持ちは変わらない。大好きだった。)


(私の方こそごめんね。最後のお願い。これから滑るスケートはあなたに向けたもの。見て欲しいの。そこに私が全部詰まっているから。)


「絶対大丈夫。」



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