やっぱりアニキ


「鍋時間したい。」

「………。」

「鍋、鍋、なーべー!冬は鍋やろ!」

「…ならば女中共に言え。」

「ちがーう!鍋時間がしたいねん。金吾さんとこ行こうやぁ!」

「…断る。」

「なんでー!そんな遠くないやろ?行こうや!」

「奴を見ると腹が立つ。」

「まぁわかるけど…でもうちはずっと金吾さんの作る鍋が食べたかった!」

「ならば一人で行け。」

「行けるわけないやろ!馬も一人やったらまともに乗れへんのに。」

「ならば諦めろ。」

「うぐぐ…三成のあほー!凶王ー!」

バタバタバタ

「おい!夢女!何処へ行く!」






城下にて

「ふんだ。三成のあほぅ。」

「おいおい、そこの嬢ちゃん。不貞腐れてどうしたってんだ?」

「えっ。うそ、アニキ!?」

「あん?あんた、俺を知ってんのか?」

「もちろん!西海の鬼でカラクリオタクのアニキ!会えて嬉しい!」

「へー、俺も随分有名なんだな。」

「ところで、何で大坂におるん?」

「いや、船がちょっとな。」

「ふーん。港に停まってるん?見に行ってもいい?」

「あ?そりゃかまわねぇが。」

「やった!行こう!連れて行って!」

「…変わった女だな。」






「うわぁーおっきい!すごい!かっこいー!」

「はっはっは!嬉しい事言ってくれるじゃねぇか。」

「なぁ、乗ったらあかん?」

「あん?」

「えっと…烏城に行きたいねん!そっちの方通ったりせん?」

「まぁ行けねぇ事はねぇが…あんたそんなとこ行ってどうすんだ。家出か?」

「金吾さんとこ行きたいねん。鍋食べに行きたい!」

「はぁ?鍋食べるだけのためにわざわざ金吾の野郎のとこまで行くのか?あんた、親は?」

「…親はおらん。」

「じゃあ一人か?」

「ううん。家族はおる。その家族があかんって。」

「なら止めときな。」

「えぇー、何でぇ。」

「女一人で野郎ばっかの船乗ってもしもの事があったらどうすんだ。」

「大丈夫!アニキがおるから!」

「…あんた、初めて会った野郎をそんなに信じるなよ。」

「アニキは大丈夫!やからアニキの部下の野郎共も大丈夫!」

「……はっ…はっはっは!言ってくれるじゃねぇか。あんた、名前は?」

「夢野夢女。」

「夢女、俺ぁあんたが気に入った。いいぜ、船に乗せてやる。」

「やった!」

「ただし、船が直るまで数日かかる。それからになるがかまわねぇか?」

「全然いいで!楽しみ!」

「なら直ったら知らせらぁ。家はどこだ?」

「あっこ。大坂城。」

「大坂城だと?あんたあそこで働いてんのか?」

「いや、働いては…」

「夢女ーーーー!」

「あん?」

「うわっ見つかった!ちょっとアニキ、隠れさせて!」

「隠れるって…」

「長曾我部。大人しく夢女を差し出せ。」

「石田じゃねぇか。なんだ、あんたら知り合いか?」

「こんなアホは知りません。」

「夢女は私の正室になる。」

「ちょぉおぉおぉぉぉ!誤解招くやろ!そんな約束してないからな!」

「そうか!石田がなぁ。いや、いいと思うぜ。」

「ちょ、アニキも真に受けやんといて!」

「夢女は私の事…」

「やめてー!今言わんといてよぉ!そんなしゅんとされてたら拒否なんてできやんやろ!」

「お似合いじゃねぇか。」

「アニキぶっ殺すぞ。」





「船に乗るだと!?そんなもの、許可しない!」

「嫌!アニキもいいって言ってたもん!」

「俺はかまわねぇぜ。」

「長曾我部、貴様は黙っていろ。」

「三成が連れて行ってくれへんねんやったらアニキに連れて行ってもらう!」

「……はぁ、わかった。秀吉様に許可を得てからだ。」

「やったー!ありがとう、三成!大好き!!」

「ッ!」

「アニキもありがとう。ごめんな、巻き込んで。」

「かまわねぇよ。良かったじゃねぇか、まるく収まって。」

「うん!三成、早く秀吉のとこ行こう!アニキ、ばいばい!今度機会があったら船乗せてな!」

「あぁ。かまわねぇよ。」

「それは私が許可しない!」




 





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