「おっちゃーん!限定のお団子まだある?」
「残念!丁度さっき売り切れちゃってねぇ。」
「くっそー!あの時三成に会わんかったらもうちょい早く来れてたのに!しゃあない。おっちゃん、いつものお団子を10本包んでちょうだい。」
「あいよ。にしてもおしかったねぇ。最後の団子もついさっき売れたんだよ。ほら、そこの兄さんが食べてるの。」
「えっ!」
「え?あっ!慶次!?」
「なんだい、知り合いかい?」
「えっと…どっかで会ったことあったっけ?」
「いや、はじめましてやけどな。うちはよう知ってるよ。前田家の風来坊で有名やん。」
「へぇ。で、あんた名前は?」
「夢野夢女。よろしく。」
「夢女ちゃんか。どうだい?これ、食べるかい?」
「え!限定のお団子食べていいん?!」
「かまわねぇよ。そんかわり、あんたの話、聞かせてくれないかい?」
「あ、もしかして恋話?うーん…そうは言ってもうちはそんな話ないしなぁ。」
「なんだってかまわないよ。まぁまぁ、隣座りなよ。」
「うん。いただきます。てか慶次は?孫一とどうなん?」
「え!孫一の事、何で知ってんの?」
「へへ、情報通やねん。」
「すげぇな。孫一か…うーん…何て言うか…クールなとこがまたいいよな!」
「つまり、あまり相手にされていないと。」
「うっ…まぁ…恋は障害が多いほど燃えるって言うじゃない。」
「障害がある方がってか障害しかないよね。まだスタートしてないもんね。」
「うっ…ひどいな。そういう夢女ちゃんはどうなんだい?いい人いないの?」
「いい人…うーん…よくわからんのよね。」
「どういうことだい?」
「付き合ってる人はおるけど、うちはほんまにその人が好きなんかって…いや、好きなんは好きなんよ。でもそれはほんまに恋愛的な意味で好きなんかどうなんかがわからんねん。」
「へー。友情か愛情かわかんないってことか。」
「いや、友情ってより家族愛かな。結構長いこと一緒に暮らして来たから。」
「夢女ちゃんはさ、何人家族?」
「えっと…今は6人。」
「じゃあさ、その家族にいい人や奥さんができたとしたら?」
「そらめっちゃおめでたいわ!うちとも仲良くしてくれたらいいなぁ。」
「じゃあさ、そのいい人にもできたとしたら?」
「そりゃぁ…えっと………もやもや…します。」
「その違いなんじゃない?」
「え?」
「夢女ちゃんのいい人と家族の違い。」
「…………。」
「どう違うかはうまく言えないけどさ、夢女ちゃんの中ではそんな感じに違いがあるんじゃないのかなぁーって。」
「…………そっか………ありがとう、慶次。」
「いやいや、俺は何にも…」
「夢女ちゃん!いたいた!もー散々探したよ。」
「えっ。左近、どうしてここに?」
「あれ、左近じゃねぇか。こんなとこで何してんだ?」
「慶次さんじゃないっすか。いや、夢女ちゃん探してて…」
「夢女ちゃん?二人とも知り合いかい?」
「そうそう。さっき話してた…」
「夢女!!」
「げ。」
「貴様…あれ程勝手に城下に行くなと言った私の言葉を忘れたか!…先程の様子がおかしかったのもやはりこの為か!」
「いやー…限定のお団子がな。」
「言い訳は聴かない。」
「うぇー。」
「え、凶王さんも知り合いかい?…もしかして…」
「なんだ、前田の風来坊か。」
「ねぇねぇ、夢女ちゃん。さっきの話、もしかして…」
「あ、やっ、えっと…そうです。」
「そっかそっか。いいねぇ。恋だねぇ。」
「ちょっ!慶次!!」
「ははは、いいねぇ。」
「もぉー!」
「貴様、夢女に対して馴れ馴れしい。」
「うわっとと。」
「ちょっ、三成!刀をしまって!慶次は友達やからいいの!」
「ふん!」
「ごめんなぁ、慶次。」
「ははは、かまわねぇよ。」
「ありがとう。」
「夢女、何をしている。さっさと城へ戻るぞ。秀吉様が探しておられた。」
「秀吉…?」
「秀吉が?なんやろ?そやったらはよ帰ろうか。みんなの分のお団子も買ったし。じゃあ、慶次、また話聞いてな。」
「あ、夢女ちゃん、あんた一体…」
「?」
「…いや、なんでもないよ。」
「そう?あ、お団子ごちそうさま。やっぱ美味しかったー。今度は皆の分買えるように急いで来るわ。」
「貴様…勝手に城下に向かうなと…」
「あー…じゃあ三成、一緒に行こう!お団子デート!な?」
「なっ!?」
「決まりー!じゃあ、慶次、またねーばいばい。」
「あぁ。………やっぱり、恋はいいねぇ。なぁ、夢吉。」
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