温泉旅館へ行こう


「ほう、なかなか良い部屋だな。」

「やろ?この旅館めっちゃ人気でな、予約大変やってんで!」

「ふん、大坂城に比べればこの程度など。」

「いやいや、マジもんの城と旅館を比べんといてよ。」

「この庭の眺めもなかなかいいっすね。」

「やろー?海が良く見えるねんで!夏やったら泳ぎに行きたいくらいやわぁ。でもこんな寒い日は温泉やんな!ってことで、じゃーん!この部屋は家族風呂付でーす!」

「へぇ、部屋に露天風呂がついてんだ。すげぇ。」

「これなら大谷君も気兼ねなく入れるかと思ってね。夢女君と選んだんだよ。」

「気遣い、大変いたみいる。」

「それに、家族風呂の方がみんなのんびり入れるやろ?楽しみ!」

「貴様も入るのか。」

「もちろん!でも大浴場も入るよ!さっさと荷物片付けて入りに行こうっと。」








「お腹いっぱいー。ご馳走さまぁー。」

「本当、夢女君はたくさん食べたね。」

「肥えるぞ。」

「そこ!煩いぞ少食!でも今日は珍しく結構食べたんやない?」

「そうよなぁ。三成にしてはよう食うた方よ。」

「うまいっすもんね!俺も酒が進んじゃって。」

「ふふ、そうだね。このお酒もなかなかのようだしね、秀吉。」

「うむ。」

「みんないいなー。一人だけ飲めへんのが残念。仕方ないのでみんなのお酌に回るよ。どんどん飲んでねー。」

「おっマジでー。俺のもよろしく!」

「はーい。お兄さんちょっと待ってねー。」





「結構みんな飲んだねー。男5人集まるとこんだけ飲むもんなんかな?」

「さて、どうかな。」

「うちも早く飲めるようになりたいなぁ…。三成にお酌してもらうねん。」

「何故私が。」

「だって三成がお酌するとことか想像つかへんねんもん!あ、刑部でも可やで!ってあれ?刑部は?」

「刑部さんならさっき風呂に行ったみたいだけど。」

「えっいつの間に!」




「……………。」

コンコン

「刑部ー、湯加減どう?」

「…夢女か、丁度良い。」

「そっかーよかった。今浸かってるん?」

「左様よ。」

「……入っていい?」

「は?」

「湯船に浸かってるねんな?」

「いや、そうだが…」

「じゃあはーいろっと。お邪魔しまーす。」

ガラガラ

「待ちやれ!」

「いやーだよん!ひゃっふーい!」

バシャーン!

「へへっ飛び込んでやったぜ。一回してみたかってんなー。」

「…ぬしはどういうつもりだ。」

「だってお酒飲んだ後すぐに一人でお風呂入るなんてもしものことがあったらどうすんねん。」

「それでもぬしは一応女であろう。われと共に風呂など…。」

「もう大浴場が閉まる時間やし、家族風呂のお湯が乳白色なのはリサーチ済み。それに家族風呂やからタオル巻いて入っても怒られへんもーん。」

「………はぁ……ほんにぬしは……いや、いい。」

「へへっ。あ、ちなみにもうすぐみんなも来るよ。」

「皆?」

ガラガラ

「うーさみぃー!」

「ッ!?」

「あ、来た来た。」

「湯加減はどうだい?大谷君。隣、いいかな。」

「…あ…いや…。」

「あったけぇー。いい湯っすね、三成様!」

「そうだな。」

「だが、少し狭いようだな。」

「まぁ…家族風呂に6人で入れば狭いやんな。むしろよく入ったよ。特に秀吉は大きいし。……あ、月が綺麗…。」

「本当だね。綺麗な満月だ。………まさかこんなにゆっくりとした時間が過ごせるようになるとはね。」

「そうだな、半兵衛。」

「(コソッ)なぁ、左近。」

「んー?何?」

「(コソッ)半兵衛ってこう見るとほんまに美人やんなー。頬がほんのり紅くなってるんとか。お湯のせいで肩から下も見えへんし。ほんま美人。」

「あー確かにそうっすねぇー。」

「………。」

「………。」

「左近。」

「何?」

「次にカメラ買い替えるときは絶対に防水性にしようと思う。」

「ちょっとそれはまずいんじゃねぇの?」




「……うへへっ。」

「どうしたんだい?急に笑いだして。」

「だってな、こんな狭いとこに6人で温泉につかってのんびりして……楽しいなって。ほんま家族風呂って感じやな。」

「ふふ、そうだね。」

「…やっぱ家族っていいな。」

「夢女君…。」

「みんないつまでも一緒におれたらいいなぁ。」




「あ、布団ひいてくれてる!さすが旅館!いい仕事するねぇ。じゃあ、うち真ん中とーった!ひゃふー!」

ばふっ

「まったく、はしたないよ。」

「ごめーん。でも気持ちいいー!ごろごろたまらん。さあ、まだうちの両サイドが空いてるよ!特等席やで!」

「では私はここにしよう。」

「われはここを。」

「おい!何故二人共、我先に一番遠い反対側の両端をとる!」

「当たり前だろう。」

「ぬしは騒しいゆえなぁ。」

「ぐぬぬ…ちくしょう。こうなったら、そんな二人の間に寝てやる!今夜は寝かさへんからな!」

「やれやれ。」




「こうやって寝転がってると修学旅行みたいでわくわくするな!」

「しゅうがく?」

「遠征先でその土地について学ぶ事だよ。僕達は体験したことが無いからわからないけれどね。」

「こういう夜は恋話で盛り上がるもんだよ、お兄さん達。」

「恋話…慶次さんが好きそうだな。」

「いつの時代も好きなもんやで。で、みんなはいい人おらんの?」

「と言われても、俺ら実際こっち来てからそんなに人と交流したわけじゃねぇしなぁ…。」

「そっかーじゃあ3人はまだおらんって感じなんかな。秀吉と半兵衛は?」

「僕らも毎日忙しいし、そんな暇はないかな。」

「うう…そんなんじゃ話が弾まない!」

「それじゃあ、夢女君はどうなんだい?誰かいないのかい?」

「え、うち?うちは…おらんよ。」

「本当に?クラスや学校にも?」

「ほ、ほんまやし。何か尋問されてるみたいでこわいねんけど。」

「…まぁいいだろう。じゃあ僕達の事はどう思ってるんだい?」

「半兵衛様!?」

「皆のこと?そうやなぁ…秀吉はお父さんみたい。」

「お父さん…。」

「半兵衛はお母さんとかお姉ちゃんかな。」

「お母…さ…。」

「三成と刑部はお兄ちゃん。」

「………。」

「左近は双子のお兄ちゃん。」

「双子!?」

「なんて言うか皆大好きな家族って感じ。」

「…そう…なのか…。」

「ほんまほんま。」

ごろごろぎゅー!

「三成大好き!」

「!?」

ごろごろごろぎゅー!

「刑部も大好き!」

「なっ!」

ガバッぎゅー!

「左近も大好き!」

「うわっ。」

バッぎゅー!

「半兵衛も大好き!」

「ふふ。」

バッぎゅー!

「秀吉も大好き!あー…この包容力、落ち着くー…。」

「そうか。」

「皆大好き。…いつまでもうちと一緒にいてください。」

「……もちろんだよ。」






「う……ん…。腕が重い…?……!?な、何故夢女がここに!?…彼処から転がって来たのか。寝相の悪い。…おい、夢女。腕が重い。即刻その頭をどけろ。」

「う………ん……すー…。」

「………………はぁ…。仕方ない。今回だけだ。」

「ん…へへ……すー…すー…。」

すりすり

「貴様!体を摺り寄せるな!」

「ん……むう…すー…。」

「………はぁ…。」




「三成君、三成君。」

「半兵衛…様…?」

「おはよう。三成君。」

「はっ半兵衛様!おはようございます!」

「目が覚めたかい?ところで…これはどういう事だい?」

「これとは…?」

「…どうして夢女君が三成君の布団で抱き合って寝ているのかな?」

「こ、これはっ!ち、違います!半兵衛様!誤解です!」

「そうか…わかったよ。これについては秀吉ともよく話し合ってみるよ。」

「お待ちください、半兵衛様!……ッ!これも夢女、貴様のせいだ!起きろ!」

「うう…煩い……何、朝…?」

「夢女、貴様!寝ぼけるのも大概にしろ!」

「…どうしたん?…ふわぁ〜…おはよう、三成。」

「貴様…。」

「何かいい夢見たわぁ。何かな、ふわふわして気持ちいい夢やってん。えーっと……あれ?うち何で三成の布団で寝てるん?」

「…………はぁ。」

「え、何でため息?もしかして…うち、三成の布団取ってもうてた!?」

「…いや、なんでもない。気にするな。」

「そう?ごめんな。ちゃんと寝れた?」

「あぁ。」




 





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