お勉強会


必要最低限の物しか置いていないシンプルな部屋で、少し長めのテーブルに勉強道具を広げて二人並んで問題を解いている。

もうすぐ期末テストが始まる。

今日は常にテスト結果が上位組である三成君に数学を教えてもらっているのだ。



「…これで合ってる?」

問題集の問いの答えを書き込んだノートを三成君に渡すと、彼は綺麗な長い手でそれを受け取り目を通した。
少し俯いて文字を目で追う彼の横顔はとても綺麗で思わず見とれてしまう。

「全て正解だ」

「良かったぁ!疲れたよぉ」

その一言にホッとして、テーブルに両手を伸ばして突っ伏した私の姿を見て、彼は目を細め、ふっと笑った。

「では、少し休憩にするか」

そう言って三成君は立ち上がり、扉を開けて部屋を出て行った。
それを見届けてから上半身を起こし、そう広くはない部屋をぐるりと見回す。
勉強机に大きめの本棚、クローゼットとベッド。
シンプルに整えられた部屋は彼を表しているようだった。

そんな風にキョロキョロと部屋を見回しているとガチャっと音をたてて扉が開き、お盆を持った三成君が部屋に戻ってきた。

「こんなものしかないが…」

そう言いながら私の前に湯気がのぼる紅茶と苺のタルトを置いてくれた。

「わぁ!美味しそう!ありがとう!」

笑顔でお礼を言ってフォークでタルトを切り、口に頬張る。
苺の甘酸っぱさとクリームの甘さ、タルト生地のさっくりした美味しさが口の中に広がる。

「おいしぃー!」

素直に感想を述べると、三成君は少し嬉しそうにそうかと呟いて自分のコーヒーをゴクリと飲み、カップをテーブルに置いて私の方を向いた。

「数学は苦手と言っていた割に簡単に解いていたな」

「三成君の教え方が上手いからだよ。授業受けるより解りやすいもん」

お世辞ではなく本心を伝えると、彼は少し照れたのか私から目線を外して再びそうかと呟く。

可愛い。
ちょっとした事ですぐ照れる。
普段の怒っているような仏頂面の彼からは想像出来ないくらいだ。

他の人はあまり知らないであろう彼のそんな表情を見れることに一人優越感を覚える。


ふとテーブルを見ると、タルトは1つだけで三成君の分は無い事に気づいた。

「あれ、三成君の分のタルトは?」

「私はいらん。お嬢が食うと思ったから買って来たまでだ」

彼はいつもそうだ。
この紅茶だって自分は飲まないくせに、私のために買ってきてくれている。
他にもたくさん私の為にと何かをしてくれる。
彼の特別であることを実感すると共に申し訳ない気持ちも沸き上がる。

「ありがとう。…でも、わざわざ私の為に用意しなくても…」

私の言葉を遮るように三成君の手が私の方へと伸びてきて、頬を、耳を、髪を撫でていく。
ドキドキとしながらその優しく柔らかい感覚に身を委ねた。

「私は僅かでもお嬢の為に何かをしてやりたいだけだ」

「でも…そんなの悪いよ」

「これはただの私の我儘だ。お嬢は何も気にしなくていい。…ただ、私の傍に居て、私を愛してくれればそれでいい」

そんな事言うなんて…ずるいなぁ…。

目を閉じて三成君の唇を受け止めた。
三成君とのキスは何度目かわからないが、いつも心臓が爆発するんじゃないかと思う程ドキドキする。

角度を変え、何度もお互いに求め合う。

「ん……三成…君…」

彼の顔が離れ、はぁと息をつく。
透き通る様な綺麗な瞳が私を捕える。

「お嬢…」

彼の大きな手が私の胸元へと触れてきた時、初めてのその感覚にビクリと体が強ばってしまった。
それに気づいたのか三成君は再度私に優しく口づけ、体を床へとゆっくり押し倒した。
するすると右手を動かし、私の服の裾まで降ろしていく。

「んッ…」

服の中に手を入れられ、直接肌に触れられる。
温かく、骨ばった男の手に脇腹をするすると撫でられる感覚に心臓は早鐘を打ち、血液は沸騰しそうな感覚になった。

あぁ、ついに三成君と…


そう思っていた時

『〜♪〜〜♪』

テーブルに置いていた三成君の携帯が鳴り出し、勢いよく二人でそちらを見た。

数秒の間鳴り続けていたが、諦めた様に携帯は静かになった。

「お嬢」

三成君はテーブルに視線を送り続けていた私の頬を優しく包み、自分の方へと顔を向けさせた。

「あ…三成君…電話は…」

「構わん。あの程度で切れるならば大した用ではないだろう」

もう一度キスをしようと顔を近づけた時

『〜♪〜〜♪』

再度三成君の携帯が鳴り響く。
しかも今回は、先程の三成君の言葉を聞いていたかのようになかなか切れずに鳴り続けている。

軽く舌打ちをしながら三成君は起き上がり、私から離れた。
まだ鳴り続けている携帯を手に取り画面を確認すると、眉間に皺を寄せながら操作をした後、鳴り止んだ携帯を再びテーブルに置いた。

「電話?出なくていいの?」

「あぁ」

短くそう答えた三成君は、寝転んだままの私にゆっくりと覆い被さって来る。
優しく私の髪を撫でた時

『〜〜〜♪〜〜♪』

今度は私の携帯が鳴り始めた。

「あ、ご、ごめん!」

三成君を避けて、慌てて携帯を鞄から取り出す。
ディスプレイを見ると、家康君からの着信だった。
三成君にごめんねと再度謝り、とりあえず電話に出た。

「もしもし」

『夢野!わしだ、徳川だが』

「うん、知ってる。どうしたの?急に」

『さっきから三成に電話をかけているんだが捕まらなくてなぁ。夢野は三成と一緒にテスト勉強しているんだろう?』

「う、うん。そうだけど…」

『わしも混ぜてくれないか?』

「え」

『今回のテスト範囲は本当さっぱりでなぁ。ははは。ワシも三成に教えて欲しいと思ってな』

「そ、そうなんだ。じゃあ三成君に聞いてみ…」

『もう既に三成の家の前にいるんだ。三成に扉を開けるように言ってくれ。じゃあ』

「え…」

そう言われて突然通話が終了した携帯から視線を上げると、さっきまでとは全く別人の様なオーラを放ちながら私の携帯を睨み付けている三成君がいた。

「あの…三成君。家康君がね…」

「あぁ、全て聞こえていた。」

声の大きな家康君の話し声は静かな室内ではだだ漏れだったのだろう、三成君は静かに立ち上がり、扉を開けて部屋を出て行った。

数秒後に窓の外で家康君の名前を絶叫する三成君の声が部屋まで響き渡った。




 





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