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ホロキャスターを片手に歩く事、約一時間。
なんの反応も示さないホロキャスター、永遠と続く木々達、滴る汗、私のストレスは最高潮に達していた。

「ここはどこぉーっ!!!」

思いのまま叫んでみるが返ってくるのは木霊する私の叫びのみ。
辺りは木々が密集していて人の気配すらしない。

完全に迷子である。

何故こんな事になってしまったのか、私は少し前の出来事を振り返ってみた。



 * * * * *


全国各地を旅している私はカロス地方のミアレシティにあるポケモン研究所へと向かっていた。
と、いうのも今回私はカロスのポケモン研究の第一人者であるプラターヌ博士の頼み事も兼ねてホウエン地方のチャンピオン、ダイゴさんの元へと赴いていたのでその報告だ。

次の角を左に曲がってもう少し歩けば研究所だという時だった。

「ーーーっ!!」

目の前を何かが突っ切って行ったのは。

驚いて目を見開かせたまま横切っていったものを目で追う。

…あれは。

「クレッフィ…ーーー」

かぎたばポケモンのクレッフィだった。
クレッフィは慌てた様子で路地裏へと入っていく。

クレッフィはこの辺りでは一般的なポケモンで珍しくはない。
私も旅の中で色々なクレッフィと出会い見てきている。

だけど、この時の私はたった今去っていったクレッフィが気になって仕方がなかったーーー。

研究所へと向いていた足は回れ右をしてクレッフィが入っていった路地裏へと私も走り出す。

道なりに走って行けば突き当たりにある扉の鍵穴に鍵を差し込むクレッフィの姿。

「!」

いたっ!そう思ったのも束の間で、クレッフィは扉を開くとサッとその中へと入っていってしまう。

「あっ、ま、待って!!」

思わず叫んだ私はそのまま開いていた扉の中へと入っていった。



  * * * * *



「……」

思い出した私は思わず頭を抱えその場で踞った。
自業自得である。

自信の向こう見ずさに呆れながら私は空を仰ぎ見た。
天辺にあった太陽は少しずつ傾き始めて肌を撫でる風はほんの少し涼しくなってきている。

日が完全に落ちる前に街か、せめてポケモンセンターでもあればいいのだけど…。

知らない場所での野宿は出来れば避けたいと、私は止まっていた足を再び動かし出した。
その時だ。

「!」

ほんの僅かにだが人の声が聞こえた気がした。
微か過ぎて微妙だが、こういう時の私の勘は意外と鋭い。
自信を信じて声のした方向へと足を向けた。

そうして木々の間を抜けた先に長い階段が続くお寺を見つけたのだった。