モテヌスとお姉ちゃん(1/2)

天野景太は困っていた。それはもう、隠してあったチョコボーをジバニャンに取られてしまうよりも困っていた。なぜなら。


「天野さんー!好きだー!」
「はは…えと、ごめんなさい」
「がーん!」


古っ!!がーん!って何だ、がーん!って!
アッカンベーカリーの前、白昼堂々と行われている告白劇に、景太はぎりぎりとハンカチを噛み締める。びりっと破れた音がした。


「モテマクール!姉ちゃんに憑くのやめたんじゃなかったの?!」
「ああ…もちろんあれから一度も取り憑いていないよ?けれども何かしら僕の影響を受けているみたいだねえ…」


それほど僕はモテるから。キラキラと光を撒きながら、モテマクールは宣う。そもそもはこの妖怪(もとはモテモ天だった)が、七海に取り憑いたのが始まりだった。なんやかんやあって結果モテモ天と友達になり、落ち浮いたはずだったのだが…今度はモテマクールに進化したことにより、以前より影響を受けやすくなったのか、状況は悪化していた。困る。すごく困る。


「ねえ!ウィスパー!どうにかしてよ!」
「ええ?!どうにかしろって言われましても…」
「姉ちゃんがモテなくなるようにしてくれる妖怪、いないの?!」


急に無茶ぶりをされたウィスパーが、慌てて妖怪パッドをフリックする。
そばにいたジバニャンは「ほんと、ケータは七海ちゃんのことになると面倒くさいニャン」とため息をついた。
「何か言った?ジバニャン」ただ般若のような顔で睨んでくるのですぐに首をすくめることになったが。

景太にとって、姉の七海は何よりも変えがたい存在なのだ。世界で一番好きな人は、姉だと大きな声で言うことができる。そんな姉が、もしどこぞの馬の骨ともわからぬ男なんぞに取られたら。
「ケータ、私この人と結婚するの」とか言われたら。


「そんなの、嫌だあああ!!」


考えただけで恐ろしかった。


「ねえ!ウィスパー!もう何とかして!絶対何とかして!そんなの俺、絶対許さないから!」
「えええ、ちょ、ケータくん、首、首絞まってます…!」


ぎゅうぎゅうと握られ、ウィスパーが悶える。これでは妖怪パッドも操作できない。


「仕方ないねえ」


見かねたモテマクールがオーバーリアクションに両手をあげた。


「取り憑かれるとモテなくなる妖怪、僕知ってるよ」
「え!ほんと?!」


パッと手を離されて、ウィスパーがゲホゲホと咳をする。「ケータくん、ひどいです…」景太はお構いなしだ。「何て妖怪なの?!」とモテマクールに詰め寄った。


「その妖怪の名前はモテヌス。僕と色違いの従兄弟さ」