「ここをやめたいって……!?えええええ!?」



えっ?えっ?彼女今なんて言った?
ボクの聞き間違いだったのかな……。
ここしばらく休みなしで徹夜続きだったものだから、疲れが出てきてるのかもしれない……。


「聞き間違いじゃありません、ドクター!辞めさせてほしいと言いました」

「やっぱりいいい!今の、この現状を知らないわけじゃないだろうに、キミはいったいどうしちゃったんだい!?」



そもそも、このカルデアの外では、世界は存在していないようなもの。
ここを辞めても、行き場はないはずだ。


「くっ……、それは、わかってます!だから、せめて門番とか……」

「誰も訪ねてくる人はいないから、警備システムに任せてるね」

「なら、食堂の皿洗いとか……!」

「今のところ、エミヤとブーディカが担当してくれてるね」

「あまり人と関わらない場所ならどこでも……!!」

「あのね、そんな場所はないって、キミもわかってるだろう?今までならともかく、ね」



ぐうっと唸り、顰めっ面を隠しもせず黙り込むなまえが、だんだん心配になってきた。
普段、こんな突拍子もない事を、言うような子じゃなかったはずなのだが。

目の前で、その白い手を固く握ったなまえを見つめて、ボク、ロマニ・アーキマンはこうなった経緯を思い出してみる。

まず、あれは立香君たちが第六特異点から帰還後からだったような……。




確か、第六特異点の定礎復元後、円卓の騎士達が、ありがたくも英霊召喚システムにより応えてくれた。

なまえは普段こそ、ダ・ヴィンチちゃんの助手だが、人手は常に足りない状態でもあるので、システムの稼働も手伝ってもらっている。

べディヴィエール卿が現れ、挨拶をかわしたあと。
その後、続けて霊子が光の粒となって中心に集まりその姿を形作ったところ、その姿がはっきりとわかる前に、なまえはいなくなったのだ。

彼女がこんな事をするのは初めてで、その場では別のスタッフに代行してもらったのだった。


霊子の主、召喚に応じてくれたトリスタン卿はといえば。
彼の挨拶もそこそこに、驚きの表情とともに、彼女が出ていった扉を穴があくのではというほど、見つめていた。


そう、見つめていた・・・・・・のだ。


琥珀色の瞳が追う先が彼女の事なのか、ぼんやり考えたけれど、普通であれば今を生きるボクたちに英霊との個人的な関わりなどあるはずもない。

ましてや、レイシフト適性のないなまえにはなおさらのこと。




─思えば、彼女はモニターの向こうを見つめる時、冷汗をかいていなかったか……?


最初はモニターの向こう、上司であるダ・ヴィンチちゃんを心配しての事かと思ってたけど……
様子がおかしかったのは第六特異点の時からだったのかもしれない。




「……ねぇ、キミはトリスタン卿と何か関係があるのかい?」


なまえは、ただ、ボク達の間にある床を見つめたまま、口を開かなかった。








私たちの関係を定義するには事柄が足りない