お疲れ様!




−−−帰宅してそのままソファーに倒れ込んだ爆豪くんに「おかえりなさい」と苦笑いで声を掛ける。わあ、どうやら相当お疲れみたいだ。ちらと鋭い目で近寄ったわたしに視線を向けた彼は口元を歪めたまま「おう」と返事を返す。返事をしてくれるだけマシな方である。「おかえり」に「俺はもう寝る」と返され、わたしよりも先にベッドに入る日もあったりするのだ。(そんな日でもちゃんとわたしの眠るスペースは空けておいてくれるし、ベッドに入ると抱き寄せてくれるんだけどね。)顔や態度は不機嫌そのものでもソファーに深く座っている爆豪くんの不機嫌メーターはMAXではない。「隣座ってもいい?」と聞くと「勝手にしろ」と言いながら少し寄って座るスペースを作ってくれる。因みにわたしは爆豪くんのこういう所がたまらなく好きだ。腰掛けると、ずしりと肩に重み。ツンツンとした髪が頬に触れた擽ったさと爆豪くん特有の汗の匂いに頬が緩む。お疲れの爆豪くんはわたしの肩に頭を預けて深く息を吐いた。


「……すげェ疲れた」
「うん、見たら分かるよ。お疲れ様だね」
「……このまま寝ちまいてェ……」
「えっとね、ご飯出来てるしお風呂も沸いてるよ。でも爆豪くんが相当お疲れならもう寝ちゃうのもアリだと思う」
「……いや、汗ベッタベタだし、風呂は入る。……飯も、食う」


でももう1ミリも動きたくねェ、なんて漏らしながら頭をぐりぐりと押し付けてくるもんだからこそばゆくて思わずあはは、と声を上げて笑ってしまった。汗で僅かにしっとりとしてる髪の毛からして、体も相当気持ち悪いんだろうなあ。でも疲れて何もしたくない気持ちとても分かります。疲れてる時って腕を上げてシャンプーしたり、ご飯を口に運ぶ動作ですら億劫なんだよね。お仕事を頑張ってお疲れの爆豪くんにわたしがしてあげられること……は!そうだ!これは名案だ!いいことを思いついてしまったわたしの唇はにんまりと弧を描く。



「爆豪くん、お風呂入りたいんだよね?」
「ん」
「わたしが洗ってあげようか?」
「ん…………ってハァ!??」
「わあいい反応」


眠気で返答が雑になっていた筈なのに、爆豪くんは目をかっ開いてわたしの顔を凝視している。……その信じられないようなものを見る目はやめて欲しいかな!


「汗でべたべたなまま寝るの嫌でしょ?でも指一本も動かしたくない、そんな爆豪くんの願いを叶える為にはわたしの存在が必要じゃない?」
「お前何か悪いモンでも食ったんか」
「失礼だなあ、もう。毎日頑張ってる爆豪くんに尽くしてあげたいって思う恋人の優しさだよ?」
「…………」


何か裏があるのでは、と疑いの眼差しを向けてくる爆豪くんに思わず唇を尖らせてしまう。確かに面白半分でちょっかいを掛けて怒らせることもあるけど、今回は本当に純粋な気持ちで言っているというのに!……でも、冷静に考えてみたらあの爆豪くんが人に頭や体を洗わせる姿なんて想像出来ないか。余計なお世話だ、と跳ね除けられるに決まってる。ああ、爆豪くんの髪の毛をあわあわにしてみたかったなあ。大っきい背中を泡だらけにしてから流してみたかった(という細やかな自分の願望は秘密である)。


「ごめんごめん、人に洗われるのなんて嫌だよね。微睡んでたのに変なこと言って驚かせちゃって申し訳ないや」
「……る」
「へ?」
「特別に洗わせてやる、っつってんだ。さっさと準備しろや」



ニヤリと片頬を持ち上げた悪人面。……とてもヒーローがする顔だとは思えないけど、これは機嫌が良い時の表情だ。

どうやら爆豪くん、とても乗り気みたいです。