一緒にお風呂



「お邪魔しまーす……」
「遅ェ」


体にタオルを巻き付けて、恐る恐るお風呂場の扉を開ける。お疲れの爆豪くんを洗ってあげるという名目だし、一緒に入るわけじゃないけれどお付き合いして初めての''一緒にお風呂''だ。わたし、ドキドキしています。腰にタオルを巻いて椅子に腰掛けた爆豪くんは気怠そうに浴槽のふちに肘を置いている。


「ご、ごめんね……自分で言い出したのに何か緊張しちゃって……」
「はァ?裸なんざ互いに見飽きるくらい見てるだろうが」
「そうだけどね!一緒にお風呂って初めてだなあと思ったら……なんか……」
「何モジモジしとんだ、気持ち悪ィぞ」
「もー、辛辣!」


意地悪を言ってニヒルに笑う爆豪くんは嫌いじゃない。頬を膨らませながら、シャワーを手に取って勢いと温度を調節する。


「……じゃあ髪濡らすね?熱かったら教えて」



ツン、と尖った髪がへにゃりと濡れて下がる様子に思わず頬が緩む。髪に触れると、濡れて柔らかくなっているのがたまらない。


「……爆豪くんの髪の毛ふわふわだあ」
「……何堪能しとんだ。さっさと洗えや」
「ふふ、じゃあシャンプーするね。目に泡が入らない様に気を付けて……あ、もしかしてシャンプーハット必要だったかな?」
「……なまえチャン?」
「冗談だってば、」


凄む爆豪くんにケラケラと笑ってポンプを数プッシュ。手のひらで温めてからもう一度髪に触れる。自分の髪の毛とは違って短い分、すぐにもこもこと泡だらけになった。マッサージするように優しく揉み込むと「……悪くねェ」とお褒めの言葉を頂いた。褒めても何も出ないぞ爆豪くん。


「痒いところはありませんか?」
「ハ、美容師の真似事かよ」
「爆豪くん専属のなまえちゃんです」
「……あ゛ー……クソ、気持ちいいわ」
「人に髪洗ってもらうのって気持ちいいよねえ」


一通りもこもこにして満足したので、目を瞑ってもらってシャワーで洗い流す。しっとりとした爆豪くんの髪に思わず感嘆の息が漏れた。「随分幸せそうだなァ」と言う声は心なしか優しい。


−−−その後は爆豪くんの背中を愛情込めて洗ってあげた。「なァ、前は?」とニヤニヤしながら聞かれたけど丁重にお断りした。爆豪くんの''アレ''を洗う程の勇気、わたしにはありません……!


洗い終わったのを見届けてお風呂場を後にする予定だったんだけど、一通り洗い終わった爆豪くんに「おい、お前も入れ」と当たり前のように言われてまさかの一緒にお風呂タイム中です。広めのお風呂だから窮屈ではないけど、爆豪くんに後ろから抱えられるかたちで浸かっているから肌と肌がぴったりくっついて恥ずかしい。がっしりとした腕が腰に回されて、首元には洗いたてでいい匂いのする頭が埋まっている。……く、くすぐったいなあ。


「お前ホントに緊張してんのな」
「な、なんで?」
「すげェ心臓の音」
「……セクハラだよ爆豪くん」
「そこに乳があったら触るだろ」
「峰田くんみたいな事言ってる……」
「心配すんな。疲れてて勃たねェから」
「そんな心配はしてない……!」


顔を真っ赤にして振り向くと、想像した顔とは全然違う顔で笑ってる爆豪くんがいて思わず静止してしまった。意地悪な顔してると思ったのに、そこにあるのは優しい顔。多分、きっと、わたしだけに見せてくれる特別な表情に胸が高鳴る。……ずるいや、爆豪くん。堪らなくなって思わずぎゅうと抱き着く。ゼロ距離で爆豪くんの甘い匂いを胸いっぱいに吸い込んで、首筋に擦り寄った。


「んー、爆豪くんの匂い落ち着く……」
「………煽ってんのか?」
「……あの爆豪さん」
「なンだよ」
「お尻に当たってるこれは……」
「…………」
「ひえ、」


ぐり、と押し当てられた爆豪くんの''爆豪くん''に思わず悲鳴をあげるとくつくつと笑われる。


「色気のねェ声出すな、萎えるだろ」
「勃ったり萎えたり忙しいね……」
「うっせ」
「……爆豪くん」
「あ?」
「逆上せちゃうからそろそろ上がる?」
「……そうだな」
「上がったら髪乾かしてあげるね」
「ん」
「あと服も着せてあげる」
「それくらい自分でするわ」
「そっかぁ、残念」


そんな会話をしながら爆豪くんの腕の中に包まれる時間が優しくて、離れるのが惜しくなる。爆豪くんは大人気のプロヒーローで、忙しい人だ。家に帰って来る時間が24時を過ぎる事も頻繁だし、こうしてゆっくり2人でお風呂に入れる機会なんて中々ない。


「なまえ」
「ん、なあに?」
「纏まった休みが取れたら温泉行くか」
「……へ、温泉?」
「一緒に入るならもっと広い方がいいだろ。今度は俺がなまえを洗ってやる」
「えっ、いや、それは……」
「行きたくねェのか?」
「……い、行く!行きたい!」


食いつく様に返事をすれば、わしわしと頭を撫でられる。「連れてってやるからちゃんとイイ子にしてろよ」と耳元で告げる爆豪くんの声は甘くて心臓がきゅうと締め付けられた。……ほんと、敵わないなぁ。



お風呂から上がって(ちゃんと髪の毛乾かしてあげました!)ご飯を食べて、一緒にベッドに入ると爆豪くんはすぐに眠りに就いてしまった。眉間の寄っていない穏やかな寝顔にひとり笑みを浮かべる。……あどけなくて可愛い。


「……ありがとう、爆豪くん」


疲れているのに、わたしに構ってくれる強くて優しいヒーローさん。大好きだよ、と小さく言葉にして爆豪くんの胸に擦り寄った。