松方シニアの二人とXXしないと出られない部屋(前)
わたしと東条くん、金丸くんの三人は現在進行形で所謂''〜しないと出られない部屋''というものに閉じ込められている。噂に聞いていた部屋とは違って、此処は真っ白で何もない部屋じゃない。洋風な部屋の真ん中にキングサイズのベッドが一つ。わたし達学生のお小遣いを出し合ったくらいじゃ到底泊まれないであろう、高級ホテルの一室……といった感じの部屋だ。こんな形じゃ無かったら、喜んでこの部屋に泊まっていたに違いない。
−−自宅や寮でそれぞれ眠った筈のわたし達三人は、何故かこの部屋で同時に目を覚ました。困惑状態のわたし達は「取り敢えずこの部屋から出よう」と比較的冷静な東条くんの言葉に従い部屋から出ようとして……この部屋に閉じ込められていると気が付く事になる。
ベッドサイドのテーブルに置かれた手紙にはこう、書かれていた。
『ようこそ、此処は''三人でセックスしないと出られない部屋''です!東条くん、金丸くんへ。なまえちゃんは処女なので優しくしてあげましょう!』
噂には聞いていた。急に飛ばされて、指定されたミッションを熟さないと出られない部屋があると。……誰の仕業か分からないけれどあまりにも悪質過ぎる。困惑と羞恥で涙を滲ませるわたしを二人は「そんな事しなくても他に出る方法があるって!」「心配すんなよ、」と必死に励ましてくれた。……東条くんと金丸くんはわたしがマネージャーをしている野球部の友人だ。二人とは松方シニア時代からの付き合いで、親友と呼んでもいいくらいの仲だとわたしは思っている。部屋を出る為とはいえ、大切な二人とそんな事をするなんて……考えられない。そうだ。出る方法はある。絶対にある。だってこんなの、おかしい。閉じ込められた部屋から出る為に友達とセックスしなきゃいけないなんて、そんなの、有り得るわけがない。
−−数分前までは、そう思っていた。
異変は、数分後に訪れる。
どうにかしてここから出る方法が無いか、それぞれ部屋の中を探索していた時に''それ''は起こった。−−カチリ。壁に手で触れている内に、気付かず壁に埋まっていた''スイッチ''らしきものを押してしまったのだ。スイッチの上部の小さな穴からシュッと顔に甘い匂いのする霧状の''何か''が噴きかけられ、わたしはそれを思い切り吸い込んでしまった。
「きゃあっ!」
「っ大丈夫か、なまえ!?」
悲鳴を聞きつけた二人が座り込んだわたしの元へと駆け寄ってくる。大丈夫、と返事を返そうとして……身体の異変に気が付いた。
「(あれ……?)」
頭がぼんやりする。身体の奥が急に熱を持ち始めて、心臓がばくばくと脈打っている。やだ、何これ。堪らず胸を押さえる。わたしの横にしゃがみ込んだ東条くんの手が労わる様に背に触れた瞬間−−背筋にびりり、と電撃が走った。
「ひぁっ……!?」
「っ、ご、めん、なまえちゃん、」
「……おい、……だ、大丈夫かよ……?」
「んっ、……ごめん、とうじょーくん……」
「いや、俺は大丈夫だけど……なまえちゃん……平気、なの?」
苦しい。熱い。……この部屋ってこんなに暑かったっけ?汗をかいた体に服が張り付く感触が気持ち悪い。東条くんと金丸くんが何か喋っているけど、頭がぼんやりしてて何を言ってるのか良く分からない。
「ね、信二……この部屋甘い匂いしない?」
「甘い匂い?……ッ、あァ、言われてみれば……何だコレ、」
「……この穴から出てるみたいだ。……あまり、吸わない方が良いね。離れよう。なまえちゃん、立てる?」
「ッもしかしてなまえ、これをモロに吸っちまったんじゃ……な、なァコレって」
「……多分だけど、そういう気分にさせる効果があるモノじゃないかな」
体が疼く。息が上がる。苦しい。苦しい。どうにかしてこの疼きから解放されたい。このままだとおかしくなりそうだ。
「……なまえ、平気か?」
「……かねまる、くん……」
「苦しいとか、痛いとか、……そういうのねェか」
「くるしい……体熱くて、頭が、ぼーっとするよう……っ」
「な、……泣くな……泣かないでくれよ、」
金丸くんがわたしの頭に触れる。……触られるの、気持ち良い。もっとして欲しい。もっと、触って欲しい。頭の上に乗せられた金丸くんの手を掴んで、すり、と頬を擦り寄せた。上から驚いた声が聞こえた気がしたけど気にしない。金丸くんの手、大っきい。ゴツゴツしてて、わたしと全然違う。……この手で、いっぱい、触られたい……。
「お、おいっ、なまえ、」
「金丸くんの手、気持ちい……」
「……ッ、東条……」
「……なまえちゃん、さっきの煙に完全にやられちゃってるみたいだね……」
「ど、……どうすんだよ、コレ」
「そう言いながら信二、満更でもないって顔してる」
「ッ、」
「好き、だもんね。……俺も……信二も、なまえちゃんの事。……ねぇ信二。この部屋、本当にセックスしないと出られないみたいだけど……どうする?」
「どうするって、おま、」
「……俺は覚悟、決めたよ」
金丸くん、この熱くて苦しいの、どうにかしてくれないかな。だって、頬っぺた触られてるだけでこんなに気持ち良いんだもん。
「で、でも、良いのかよ……」
「なまえちゃんもこんな状態だし……此処から出る為にそうするしかないなら、俺はなまえちゃんを抱く。……抱きたい」
「…………」
「信二も決めてよ、覚悟。……ね、なまえちゃん、……俺も君に触って良いかな?」
優しい顔をした東条くんが、金丸くんが触れているのとは反対側の頬を手のひらで包み込む。金丸くんとはちょっと違う、でも、やっぱり男の人の手。温かくて心地良い。
「……とーじょー、くん……」
「君にいっぱい触れていい?なまえちゃんのその熱くて苦しいの、俺がどうにかしてあげたいんだ」
「……どうにかしてくれるの?」
「ッ、お、れも、……俺も、なまえに、触れて、良いか?」
東条くんに触られるのも、金丸くんに触られるのも気持ちが良い。全然嫌じゃない。だから、何も考えずにこくんと頷いた。
「……なまえちゃん、俺たちさ、なまえちゃんの事好きなんだ。ひとりの女の子として」
「お、おいっ、東条、」
「今からそういう事するんだから、本心はちゃんと伝えておかないと駄目だろ。……なまえちゃん、俺たち誰でも良い訳じゃないから。なまえちゃんだから、触れたいと思うんだよ」
「…………ああ、そうだ。お前の事、す、……好き、だから……ッ、ああクソ、言うつもりなんて、無かったのに……!」
「……うん、わたしも二人の事好きだよ……?」
「……それが俺たちと同じ好きかどうかは分かんないけど、」
「まァ、なまえの口から好きって聞けただけでも、」
「……良しとするか」そう言いながら二人が顔を見合わせて笑った。その笑みの理由は良く分からないけど、この部屋に閉じ込められてから初めて見れた二人の笑顔に何処かホッとしているわたしがいる。
「……あ、れ?」
ぼふん。東条くんに押し倒された。ふかふかのベッドに背中を預ける形になって、わたしの上には東条くんが乗っかっている。そしてその隣には、金丸くん。
「……こんな形ではあるけどさ、なまえちゃんに触ってるなんて……夢みたいだな。うわあ、肌すべすべだね」
「お、俺達もこういう事すんのは初めてだけど、なまえを気持ち良く出来るように頑張るから……さ」
「んっ……」
東条くんの唇が首筋に触れる。金丸くんの手が、髪を撫でる。それだけでお腹の奥の方がきゅうんと疼いて、変な感じ。……わたし達お友達なのに、チームメイトなのに、本当にこんな事していいのかな。そんな思考を、部屋に充満する甘い香りが奪っていく。
「……なまえちゃん、キス、していい?」そう言って近付いてくる東条くんの顔を避ける事はしなかった。
ちゅう。
あ、そういえばわたし、キスするの
……初めてだ。
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