おひめさまはもてもてなの

「姫だって、その赤ん坊くらいちっちゃかったんだぞ〜?」
「そうなの!?」

サッチの言葉に驚いて目を真ん丸にするエマを見てクルー達が声を上げて笑う。

上陸した島で出会った赤ちゃんの話を一生懸命するエマの頭を撫でたサッチは、数年前のことを思い返していた。

まだエマが赤ん坊だった頃、海賊船には到底似合わないようなことを全員が必死に頑張っていたことは昨日のことのように思い出せる。

「夜泣きって言ってねい。いつもは寝ている時間にお前が泣くから俺達はいっつも起こされてたんだよい」
「なんでないてたのー?」
「何でだろうねい。寂しかったり、お腹が空いたりしてたのかもしれないねい」
「そっかあー、たいへんだった?」
「そりゃァ、大変だったよい」

エマの隣に座っていたマルコがマグカップを傾けながら話をしてやれば、エマは興味津々と言わんばかりに話を聞いている。

自分の話だと言われてもあまりピンと来ていないようで、まるで知らない人の話を聞いているような態度のエマにマルコもクツクツと喉を鳴らして笑った。

「今はちゃーんと一人で飯食ってるけど、前は俺達が食わせてたんだぜ」
「皆お前に飯食わせたくて、一口ずつ順番に食わせたりしてたんだよい」
「ごはんたべさせたいの?」
「飯食ってるエマが可愛かったからなぁ〜!みーんな近くで見たくて必死だったってことだ」

サッチとマルコの言葉にうんうん、と首を傾げて一生懸命話を理解しようとするエマだったが、やはりピンと来なかったようで唇を尖らせる。

見かねたサッチが頭をぐりぐりと撫でて笑えばエマは小さな両手で自分の頬を支えてはぁ、と態とらしいため息をついた。

「あーあ、もてすぎてこまっちゃうわねー」
「ぶっ、おま…そんなセリフどこで覚えてきたんだよい!」
「おねーちゃんたちがいってたー」

凡そ、幼児の口から発せられる言葉じゃないそれにマルコが飲んでいたコーヒーを吹く。慌ててエマの方を向けばキョトンとした顔のエマがなんてこと無さそうな顔で返事をする。

蝶よ花よ、と大事に育ててきたエマがしっかり海賊らしく育っていることに嬉しく思うべきか否か、複雑な思いがマルコの心を錯綜する。

複雑そうな顔をするマルコに対してゲラゲラと腹を抱えて笑うサッチは恐らく海賊らしく育ったエマが愛おしくて仕方がないのだろう。

「まるこどしたの?」
「…何でもねぇよい」

大笑いを続けるサッチと難しそうな顔をするマルコを交互に見て、それからまた首を傾げたエマにマルコがへらりと笑って頭を撫でた。

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