「うん。じゃあ、またね」
当たり障りのない理由で同窓会の二次会を断った名前は愛想笑いで友人達に手を振り、一次会の会場だった店を後にした。同窓会、とは言っても中学の時の友人なんてさほど仲が良かった訳でもなければ、特別な思い入れがある訳でもない。正直な話をすれば割と早い段階から抜けたいとすら思っていた。
「はぁ…」
別に友人がいない訳では無い。今日の同窓会でも懐かしいね、と声をかけてきてくれる人達は多くいた。が、名前からすれば友人というより中学の同期というレベルでしかなかったのだ。当然、そんな人達しかいない場所に行けば帰りたくなるのも頷ける。変な気を使ったせいかやけに疲れたような感覚に名前は小さなため息をついた。
「…花宮?」
「苗字さん?」
「何花宮、友達?」
「ああ、高校時代の友人だよ。どうしたの?苗字さん、こんな所で」
「中学の同窓会の帰り。花宮は?」
「俺も同じだ、奇遇だね。久しぶりに会ったことだし一杯どうかな?もちろんお代は俺持ちで」
「本当?じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」
「決まりだね。じゃあ、悪いけど俺はこれで」
大きな通りに出ようと飲み屋街を足早に歩いていた名前の目にふと入ったのは高校時代でよく会話をしていた所謂、悪友の姿。小さな声で呟いたつもりが聞こえてしまっていたのか名前の声に反応した男が振り返る。見間違いかとも思ったが間違いではなかったようで、その男は確かに名前の高校時代の悪友、花宮真だった。
どうやら二次会に行こうと絡まれていたようで鬱陶しげな顔をしていた花宮だったが、名前の姿を見て目の色が変わる。その瞬間、コイツ私を利用して二次会パスるつもりだな、と直感的に名前は理解した。あの目は確実に何か企んでいる時の目だ、と名前は先ほどとは違った意味でため息をついた。話に乗るように言葉を紡げば花宮はニヤリと悪そうな笑みを浮かべる。あぁ、ほらやっぱり。