(Side:萩原)
ぐらりと傾いた華奢な体を慌てて抱き留める。真っ青な顔で胸元をキツく握り締めたまま意識を失った香澄ちゃんを抱き上げてリビングのソファにゆっくりと下ろして、くしゃりと前髪を握り締めた。「助けてって、言われたのにこのザマかよ」と自嘲めいた笑みを零せば、松田が俺の背中を叩く。
「一人でぶっ倒れてねぇだけマシだろーが」とは言うものの、松田の表情も俺と同じだった。自分と親友の命の恩人。そんな彼女から助けて欲しいと言われれば、駆けつけない訳がなかった。香澄ちゃんが何かに怯えていることに、俺は気付いていた。だけど、それを思い出させるのは酷だろうと、自分から話してくれるまで待とうと。
そう思っていたけれど、その選択は間違いだったのかもしれない。香澄ちゃんの赤くなった目元をそっと撫でて「……変な夢見た、って言ってたんだ。香澄ちゃん」と静かに口を開く。松田はそれを黙って聞いていた。
「多分、俺らの時と同じで何かを見たんだと思うんだよね。あんなに怖がってたのは、それが原因なんだと思う」と悔しそうに顔を顰めて拳を握りしめた俺に「……だろうな。コイツが助けてなんて、直接言うくらいにはヤバかったってことだろ」と松田も同意する。
「死にたくない、なんてさ…普通に生きてたら、考えもしないじゃん」と香澄ちゃんの頭を撫でながら小さな声で呟く。「助けてって言われなくても、助けてあげたいんだよ。体だけじゃなくて、心も、全部」と泣きそうになれば、松田もぐっと拳を握りしめる。
「……あぁ」と俺の言葉に同意するように松田が頷く。「起きたら、ちゃんと聞いてやんなきゃな。胸糞悪い、怖い夢とやらをよ」と言った松田が俺よりも荒っぽい手つきで香澄ちゃんの頭をくしゃりと撫でる。今度は悪い夢を見ませんように。願わくは、幸せな夢を見れますように、と俺は香澄ちゃんの手を握った。