(Side:萩原)
香澄ちゃんの自宅を出て数分。「あれってさぁ」とポケットに手を突っ込んだまま空を見上げた俺の言葉に「あぁ、だろうな」と松田が頷く。「金髪の男が『ひろ』って呼んでたなんて、覚えがありすぎるでしょ」「スマホごと心臓ぶち抜いたってことは情報持ってかれたらアウトってことだろ」「人目に付いちゃいけないアイツらはやりかねねぇわな」と静かに情報を整理する。
香澄ちゃんが話してくれた内容から察するに死の危険があるのは諸伏ちゃんだ。何をしているかは定かではないが、恐らく潜入捜査。そして身分がバレたことによる自決。と、すると身分がバレる原因になった何かがあった、もしくはこれからある、と考えるのが妥当だ。
「メールで話せる内容じゃねぇな」「だね。証拠を残さない為にも会って話すのが無難かな」と頷いてポケットからスマホを取り出す。「んじゃ陣平ちゃんは首席様に連絡よろしくね。俺は相棒の方に連絡しとくよ」と笑ってぱちりと綺麗にウインクをすれば「あの堅物を引っ張り出すのは骨が折れそうだな」と松田は苦虫を噛み潰したような表情で思考を巡らせた。
堅物な降谷ちゃんが非現実的且つ正確性の無い情報で出てくるとは思えなかった。「ま、嘘も方便って言うしな。アイツが表に出てきてくれさえすれば、どうとでもなるだろ」と悪戯っ子のようにニヤリと笑った松田を見て俺は頬を引き攣らせた。「会って早々殴り合いに発展しかねない内容送んないでよ?」と一応釘を刺すけれど「そりゃアイツ次第だ」と松田は楽しげに鼻を鳴らす。
「香澄ちゃんがあんなに泣きながら教えてくれたんだから無駄に出来ねぇだろ。それにアイツが死ぬかもしれないのに放っとける訳ねぇよ」と拳を握り締めた俺の隣で「ああ。アイツら二人で、生きて、命の恩人様にお礼してもらわねぇとな」と松田も同じように拳を握り締めた。