みんなと一緒ならどこまでも

「香澄ちゃん、足元気をつけてね」と私が段差に躓かないように声をかけてくれる萩原さんに「ありがとうございます」と返す。あれからリハビリを続けて、今まで通り…とはいかないけれど一人で歩くことはできるようになった。

スピードも遅いし、歩幅も狭いし、正直歩いているのかと聞かれたら微妙なところではあるけれど、それでも一人でどうにか出来るようにはなった。萩原さん達は必要以上に手を貸したりはしないけれど、ちょっとした段差や階段の時はちょっぴり過保護になる。

「ほら、手出せ」と松田さんに手を差し出されて支えてもらいながら階段を上る。最初は一緒に出かけると不便な思いをさせてしまうかも、と気が引けてしまって誘いを断ったりしてたんだけど「俺たちの隣に立って、一緒に歩いてくれるんじゃなかったの?」と悪戯っ子のように笑った諸伏さんに「その言い方、ずるい」と唇を尖らせたことを今でもしっかり覚えている。

突然、パチリとスイッチが入ったように頭の中に流れる不思議な映像は今も見える。その鮮明な映像に気持ちがざわついて、どうしようもなくなった時は、誰かが必ず傍にいてくれた。「迷惑だなんて思わないから、困った時はちゃんと教えてくれよ」と私の頭を撫でた伊達さんのお陰で、少しずつ助けてって言えるようになってきた……と、思う。

まだまだ足りないって、言われちゃうことが多いけど。でも、私が助けを求めるとみんなが、嬉しそうにしてくれるから。きっと、間違ってないんだって思えるようになった。「香澄、おいで」と手を伸ばして待っていてくれる降谷さんの元に、一歩ずつ、確実に、自分の足で歩く。

「歩くの早くなったんじゃない?」とパッと表情を輝かせた萩原さんの隣で「走れるようになるのも時間の問題だな」と松田さんが笑って私の頭をくしゃりと撫でる。「でも、そういうこと言ってるとすぐ無茶するからなぁ」と困ったような顔で伊達さんが笑って「あんまり無茶したら街中で抱えちゃうからね」と諸伏さんが私の額を小突く。

「それは…ちょっと…」と苦笑いで返せば「一緒に歩いてくれるなら、なんだっていいさ」と降谷さんが優しく微笑む。握った手の温かさも、笑い合う声も、顔も。全部、生きているから得られるものだ。みんなと一緒ならどこまでも歩いて行けるから。
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