待ち合わせ場所で女の子たちに囲まれる松田さんを見て思わず苦笑いが零れた。嫉妬の一つや二つくらい出来れば可愛げもあるというものだろうが、如何せん女の子たちに囲まれる松田さんの顔があまりにも凶悪すぎて苦笑いを零すしかないのだ。
いつものように近付いて「ごめんなさい。その人、私と待ち合わせ中なんです」と女の子たちに声をかければ「はぁ?邪魔しないで」と怪訝な顔で私を見た女の子たちにどん、と肩を押される。
「わ…っ、」と踏み留まろうとした足は変な着き方をしてしまったようでがくんっと膝が抜けた。尻もちを着くようにぺたりと座り込んで「い、たた…」と眉間に皺を寄せていれば、泣きそうな顔をした松田さんが「ッ香澄!!」と女の子たちを振り切って駆け寄ってくる。
「怪我は?足、変に捻ったりしてねぇよな?」と心配してくれる松田さんに「大丈夫です。ちょっと、バランス崩しちゃっただけだから」と苦笑いでへらりと笑って返す。足よりもおしりの方が痛いけど、さすがにそんなことは言えない。
ひらひらと手を振って大丈夫、とアピールをすれば松田さんは安心したようにホッと息を吐く。そんな私たちを見た女の子たちが「は?何あのアピール。うざすぎ」「ていうか何あの格好。ダサすぎ」「何であれで隣歩けんの?」とコソコソ話し出して、つきりと胸が痛む。
動きやすさを重視した服と、ぺたんこの靴。誰が見たってカッコイイと評される松田さんの隣を歩くには地味な私。そんなの、言われなくても分かっていた。「松田さん、ごめんなさい。今日は、」と無理やり笑顔を作って顔を上げた私を松田さんが抱き締める。
ぎゅっと胸元に頭を押し付けられて「ま、まつ…」と名前を呼ぼうとしたけれど「テメェらに何が分かんだよ」と鋭い声に遮られる。「まぁ何にも知らねぇのに上っ面だけで判断して文句言うような薄っぺらい奴に分かってもらおうとも思わねぇけどよ」と鼻で笑った松田さんが私の膝裏に手を回して、そのまま立ち上がる。
ふわりと体が浮いて横抱きにされた私は「わ…っわ、!」と咄嗟に松田さんの首に腕を回す。「悪ぃが、俺の女は世界で一番イイ女なんだよ。テメェらとは比べるまでもねぇ」と冷たい目で女の子たちを見下ろした松田さんに思わず胸がきゅんと高鳴った。
言葉を失って何も言えずに立ち尽くす女の子たちに見向きもせずに歩き出した松田さんに「あっ、あの…!松田さん、あるけるから…!」と言うけれど「無理。お前すぐ平気なフリするだろ」とバッサリ切り捨てられる。
「それに、こっちの方が俺がお前しか見えてねぇってアピールできんだろ」と笑った松田さんに勝てる気がしなくて、顔を隠すように松田さんの肩口に顔を埋める。「…松田さん、すぐそういう恥ずかしいこと言う」と呟けば「あ?別にホントのことなんだから良いだろ」と本気で分かって無さそうな声が返ってくる。
「もう…!いいから早く、下ろしてください!」と半泣きで訴えるけれど松田さんは暫く下ろしてくれなかった。