ニッコニコの笑顔で研二さんが私の名前を呼ぶ時は大体何かを企んでいる時だと学んだ。「……なんですか」と警戒しながら返事をすれば「うお、そんな警戒しないでよ」と苦笑いの研二さんが私の頬を両手で包んでうりうりと揉んでくる。
「んむ、ぅ」とされるがままになっていれば「お願いがあるんだけど」と研二さんがきゅるんと上目遣いで見つめてくる。研二さんにこの目でオネダリをされると私は毎回断れずにOKしてしまう、ということも最近学んだ。
うぐ、と言葉に詰まって「…内容に、よります」と返せば、研二さんは「ふはっ、」と吹き出して笑ってから「香澄ちゃんからちゅーしてよ」と私に頬を向けてくる。一瞬言葉の意味が分からずに固まってから「…む、無理です!」と首を横に振れば「えぇ〜…」と露骨にしょんぼりと眉を下げられる。
「どうしても?」と私の両手をぎゅっと握ってくる研二さんに「だ、だって…!」と言いかけてぴたりと止める。「だって、なぁに?」とこてんと首を傾げた研二さんに「だ、だって…は、はずかしい…」と顔を真っ赤にしながら伝える。
研二さんからキスされるのだって恥ずかしくて耐えられないのに、自分からなんて出来るわけない。「何でよ、もっと恥ずかしいことしてるじゃん」とくすくす笑いながら研二さんが私の頬を撫でて、唇を撫でて、そのまま指先が首を滑る。
「っぅ、そ、それは…っ、」と顔を上げて、後悔した。瞳の奥に宿る熱。欲を孕んだ熱い目に見つめられて、こくりと唾を飲み込む。「ね、ほんとにダメ?香澄、出来るでしょ?」と名前を呼び捨てにされてしまえば、もう抗えない。
「め、とじて…?」と震える声で言えば「はい、どーぞ」と嬉しそうに笑った研二さんが目を閉じる。女は度胸!と意気込んで、ぎゅっと目を瞑って唇を寄せる。ちゅっと頬に口付けて、そろりと離れようとすれば後頭部に手が回されて唇が重なった。
そのまま食べるように深く口付けられて、体の力が抜けていく。「な、なん…っなに、…!?」と混乱で目を見開く私に「香澄ちゃんが可愛すぎて我慢できなくなっちゃった」と研二さんが肩を竦めて笑う。
「ね、今度はこっちにちゅーしてよ」と人差し指で自分の唇をとんとん、と叩いた研二さんの顔に「〜〜ッむ、むり!!」とクッションを押し付けた。