ある日から事件に巻き込まれる確率が跳ね上がった。己の身を守ろうとした結果、イケメンの命も救ってしまったようで、何故か私はイケメンたちに絡まれまくっている。本当に許して欲しい。ごめんなさい。
「うっ…うっ…私が、私が何をしたと言うの…!」と両手で顔を覆ってしくしくと泣いていると「……お前、また巻き込まれてんのか」「本気でお祓いとか行った方いいんじゃない?」と背後から声をかけられる。
「きゃーーー!?!?!?」と悲鳴を上げて後ずされば、そこに立っていたのは数年前に偶然命を救ってしまったイケメン二人が立っていた。「いや……もういや……」と再び両手で顔を覆えば「何が?事件が?」と萩原さんが首を傾げる。
事件が嫌じゃない訳ないでしょう。何言ってるんですか。「それもだけど事件現場に毎回やってくる面の良い男たちも嫌……」としくしく泣く私に「それ俺らのこと?超褒めてくれるじゃん」と萩原さんがご機嫌に笑う。
「嫌って言ってんじゃん!!!」と声を荒げる私のリアクションが面白いのか、萩原さんと松田さんはめちゃくちゃに構ってくる。嫌だと言っているのにも関わらず、やたらと友人に会わせようとしてくる二人に何度目かの拒否をする。
「イケメンの周りはイケメンしかいないって法律で決まってる」と真顔で吐き捨てれば、松田さんが「決まってねーよ。キマってんのはお前の頭だ」と私の頭をスパーンと叩く。仮に私の頭がキマってたとしても、全てはアンタらのせいだ。
「いやーーー!!!イケメンの友達なんて紹介されてたまるか!!!私は帰る!!!」と悲鳴を上げる私を見て「すっごいフラグ建てるじゃん。むしろ会いたいでしょ、それ」と萩原さんがゲラゲラと笑う。
その隣で同じようにニヤニヤ笑う松田さんもいて「違う!!!やめてニヤニヤしないで!!!」と二人を指差すけれど、二人はそんな私のことなど一ミリも気にしていない。何なんだよ、この人たち。
嫌だと言っているのにも関わらず、強引に引きずられてやって来たのは、最近イケメン店員さんが働き始めたと噂の喫茶店。ぐいぐいと手を引かれて店内に足を踏み入れれば「おや、今日はご友人と一緒ですか?」と金髪褐色肌のイケメンに笑いかけられる。
「いやーーー!?!?裏切り者!!イケメンなんていないって言ったのに!!イケメンじゃん!!嘘つきは泥棒の始まり!!絶許!!」と萩原さんの後ろに隠れれば「あ?ただのゴリラだろ」と松田さんが宣う。
アンタ何言ってんですか、と冷たい目を向けた私よりも更に冷たい視線を向けたのは当該のイケメン店員さんだった。「ちょっとmtdさんどういう意味ですかそれ」と店員さんが松田さんに詰め寄るけど、松田さんはどこ吹く風だ。
「今日はamrちゃんがいる日だったか」と肩を竦めた萩原さんをジト目で見る。本気のうっかりですか、それとも確信犯ですか。まあどっちでも嫌なものは嫌ですけどね。「やだもう帰る!!」と踵を返そうとするけれど萩原さんが許してくれない。
席に座り「いや…もういや…」と何度目か分からない拒否の言葉を漏らせど、事態は一向に変わらない。「前にも見たな、これ」と呆れた顔をする松田さんの隣で「お〜い何飲むか決めて〜」と萩原さんがメニューを差し出してくる。
ニコニコしながら注文をまっている店員さんから逃げるように両手で顔を覆って「こんなイケメンにサーブさせたら多方面から56される無理辛いやだ助けて私帰る」と一息で言い切る。その顔があって何で喫茶店の店員やってんですか。
「はいはい56されないから選んでね」と私に見えるようにメニューを開いた萩原さんは、私の話を全く聞いてくれない。もう嫌だ。「あ、レモンタルトあるよ。食べない?」とメニューを指差した萩原さんにちょっとだけ肩が揺れる。
「………たべる」と素直に呟けば、ニコニコ笑った萩原さんが「飲み物は?ラテ?それとも紅茶にする?」と聞いてくる。「……こうちゃ」と再び素直に答えれば「あったかいの?冷たいの?」と続けて質問が飛んでくる。
「……あったかいの」と返しながら、二択の質問って無視しにくくない?ズルくない?と萩原さんにジト目を向ければ、綺麗な微笑みで返されて撃沈する。この人何なんだよ、と顔を覆った私を見て松田さんが吹き出した。
私の返事を聞いた萩原さんが「ん、りょーかい。amrさん注文おねが〜い」と店員さんを呼ぶ。できる限り距離を取ろうとして壁に頭を押し付けて顔を逸らしていれば「恥ずかしがり屋、とかいうレベルではないですね?」と店員さんが驚いた声を上げて「くくっ…おもしれェだろ?」と松田さんが笑った。