先日の安室さん事件を忘れたとは言わせない。なぜ私は再び友人を紹介されているんだ。「だから私の周りにイケメンばっかり連れてこないでください!!既婚者とか関係無い!!」と机を叩いた。
「既婚者もダメなのかよ」「ガード硬いなあ」とケラケラ笑う二人の隣で「連れてこられて来て早々に物凄い勢いで拒否られてるんだが?」と首を傾げているのは、彼女持ちだから大丈夫、という意味の分からない理由で紹介された伊達さんだった。
「既婚者だからダメなんですよ!!結婚できてるってことはそういうことでしょ!!」と怒鳴りながら机をダンダンと叩く。「だって班長。イケメンだって」と楽しそうに笑う萩原さんの言葉が理解できなかった伊達さんが首を傾げる。
「今の会話のどこでそうなったか教えてくれ」と困った顔をする伊達さんに正直強めに同意した。「コイツあまりにも事件に巻き込まれすぎてイケメン恐怖症だか何だかを発症してんだと」と呆れた顔で松田さんが私を指差す。
今の話の流れでどうやったらそうなるんですかね。もう会話できないなら帰りましょうよ。疲れてるんだよ、二人とも。と遠い目をして全てを諦めた私と彼らを交互に見てから「だから今の会話の中のどこでそうなったんだよ」と伊達さんが首を傾げる。
「イケメン3人で仲良くお帰りください。もう二度と会うこともないでしょう。さよなら!!!」と立ち上がった私の手首をしっかり掴んだのは松田さん。「この時間にお前を一人で帰すとでも?」と笑った松田さんにハッとした。
「謀ったな!?!?これだからイケメンは!!!」と吐き捨てれば「イケメン関係なくねぇか」と同じように考えることを止めたらしい伊達さんがビールジョッキを傾ける。あの、もう少し頑張ってもらっていいですか。諦めるの早すぎませんか。
「もうね、全部イケメンのせいにしたいお年頃なのよ」と頬に手を当てて困っちゃうわね、と言う萩原さんに心底冷めた目を向けて「どんなお年頃ですかそれ」と再び椅子の上に腰を下ろす。ええい、こうなったらやけ酒だ。
そうしてやけ酒の末の二日酔いを乗り越えた数日後。安室さんに呼び出された私は「イケメンじゃん!!!」と悲鳴を上げた。「えっなんで俺こんな警戒されてんの?」と首を傾げるイケメンからできる限り距離を取る。
「これが彼女の通常モードです。気にしなくていいですよ」と肩を竦めた安室さんを見てから、両手で顔を覆う。「amrさんの友達がイケメンじゃないわけ無かったんだ!!騙された!!」としくしく泣く。辛い。
「騙すもなにも、僕はただ『貴方に助けられてお礼を言いたいと言っている人がいるので会ってくれませんか』と言っただけです」と言った安室さんに返す言葉が無い。だってその通りだから。確かに騙されてない。
「うっ……ぐぅ……」と悔しさで言葉を失っていれば目の前のイケメンが口を開く。「あー、その、あの日はありがとう。君のおかげで、俺は助かったんだ。本当にありがとう」と頭を下げたイケメンに「い、イケメンからのお礼……!?刺されるじゃん!?」と涙が出た。
「そんなので刺されてたらこの町はとっくに崩壊してますよ」と呆れた声でため息を吐いた安室さんに「私の世界はもうとっくに崩壊してます。すべてはイケメンのせいです」と恨みがましい視線を向ければ「この子の怒りの矛先が謎なんだけど」と首を傾げられる。
「発作みたいなものなので、無視していいです」と既に私の扱いが雑になって来た安室さんが言い切るから「amrさん酷い!!なんか日に日に私の扱いが雑になるんですけど人によっては特別扱いみたいに映るので辞めてください!!」と悲鳴を上げてしまう。
私の切実な叫びに「物凄く必死だな……?」と苦笑いを零したイケメンに「こっち見ないでください!!!」と両手で顔を覆えば「えっ!?あっ、ごめん……?」と困ったような声が返ってきた。