「俺、香澄ちゃんのこと好きなんだよね」と笑った萩原さんに「……は?」と開いた口が塞がらなかった。「想像もしてませんでしたって顔してる」とくすくす笑った萩原さんが私の頬をつん、と人差し指でつつく。やめてください。
ビシリとその手を叩き落として「何の冗談ですか」と言えば「冗談じゃないよ。本気」と真っ直ぐに見つめられる。「時と場所、ちゃんと考えて香澄ちゃんの家に遊びに来てる時にしたんだよ、俺。偉いでしょ」と笑う萩原さんに「……え、らくないですよ」とそっぽを向きながら返す。
じわじわと顔が熱くなって萩原さんの顔が見れない。「ね、こっち向いて」「やだ」「俺もやだ。ねぇ、お願い」「〜〜ッやだ!」「香澄ちゃん、好き」「うるさい」「ね、香澄ちゃん、大好きだよ。本当に好き。超好き」と距離を詰めてくる萩原さんから逃げようとするけれど腰に回された手のせいで立ち上がれない。
ソファの背もたれに押し付けられて逃げ場を失った私に、萩原さんは追い打ちをかけるように好きだと口にする。とうとう耐えきれずに「〜〜ッうるさいですってば…!」と萩原さんの顔を見れば「あ、こっち見た」と眦を下げた萩原さんがとろりと笑って私の鼻先にちゅっとキスを落とした。
「香澄ちゃん、本当に嫌だったら俺のことなんて家にも入れないし、隣にも座らないよね」と頬に添えられた大きな手が、顔を逸らすことを許さない。「俺のこと、嫌いだったら殴ってでも、蹴ってでも逃げるよね」と甘く微笑む萩原さんにきゅっと唇を噛み締める。
「ねえ、香澄ちゃん。俺、本当に、本気で香澄ちゃんが好きだよ。罰ゲームとか、興味本位とかそんなんじゃない。本気で、香澄ちゃんのことが、一人の女の子として好きだよ。香澄ちゃんは、俺のこと、どう思ってる?」と親指で私の頬を撫でながら萩原さんが優しく笑う。
バクバクと心臓が大きく音を立てて、呼吸が苦しい。本気だって、嘘じゃないって、分かっちゃうから余計にはぐらかせない。「わたしのこと、ほんとにいちばんに、してくれるんですか」と震える声で聞けば「うん。もうとっくに香澄ちゃんが一番だよ」と言ってくれる。
「わたし、めんどくさいですよ」と言えば「ははっ、知ってる。それも全部ひっくるめて、大好きだよ」と楽しそうに笑われる。「なんで、わたしなんですか」と唇を尖らせれば「香澄ちゃんじゃなきゃダメだから」と笑った萩原さんがこつりと額をぶつけてくる。
「ね、もういい?ちゅーしたい」と見つめられて心臓が一際大きく音を立てた。何て返せばいい?どうしたらいい?ぎゅっと胸元の服を握り締めたまま、きゅっと目を閉じれば「ここで目閉じるってことは、ちゅーされても文句言えないよ」と楽しげに笑う萩原さんの声がして、唇が重なる。
すぐに唇が離れて「はぎ、」と名前を呼ぼうとすれば、再び唇が重ねられる。「んっぅ、」と驚きで目を見開けば、どろりと欲を孕んだ瞳と視線が交わった。好き、大好き、と何度も呟きながらキスをされて頭がおかしくなりそうだった。
「は…っ、はぁっ、は…ぁっ、」とソファの背もたれに身を預けてぐったりする私の頬を両手で包んで「おれのこと、好き?」と首を傾げた萩原さんに「うわきしたら、さしてやる」と可愛くない返事をしながらキッと睨み付ける。
好き、の一言くらい素直に言えばいいのに。言えない自分に嫌気が差す。けれど、萩原さんは私の返事を聞いて嬉しそうに笑って「浮気は絶対しないけど、香澄ちゃんの嫉妬で刺されるなら大歓迎だよ」と私の頬を両手で包んで再び触れるだけのキスを落とす。
「大好きだよ、香澄ちゃん」ととろけるように笑った萩原さんから逃げるように萩原さんの胸元へ頭を押し付けた。