「ばくだんのおにいちゃん、おようふくきないとだめよ。あぶないよ。ばくだんね、とまってなくてね、ばーんってなるからね。まちゅ、まつりゃ、まちゅださんがね、ないちゃんからね」と幼女に言われたことがきっかけで、萩原は死を免れた。
「俺、天使に会ったかもしれねぇ」「頭でも打ったか」「せめて疑問符付けて。打ってないから」と松田を軽口を叩くものの、萩原の頭の中にはあの日自分に声をかけてくれた小さな小さな女の子のことばかり。
あの日の話をいつ、どこで、どうやって知ったのか。尋ねたい気持ちが2割と、お礼を言いたい気持ちが8割。いや、1割と9割。とは言え、一度しか会ったことのない女の子を探すなど難易度はエクストラハード。
名前を知っている訳でも無いし、どうしたものかと思いながら歩いていれば正面から「あ!ばくだんのおにいちゃん!」と声が聞こえる。反射的に顔を上げた萩原の目の前には、可愛い可愛いあの子が立っていた。
たったか駆け寄ってきた女の子の前にしゃがみ込んで「こんにちは」と挨拶をすれば元気いっぱいな「こんにちは!」が返ってくる。「おにいちゃん、おようふくきた?けがしてない?」と首を傾げた女の子に萩原は頭を下げた。
「本当にありがとう。君のお陰で、俺はいなくならなかった。ありがとう」と告げられたお礼に女の子がふにゃりと笑う。「んーん!香澄ちゃんのね、ゆめのなかでね、おにいちゃんがごめんねってあやまるからね、ごめんねしなくていいようにおしえてあげたの!」と萩原の頭を撫でる女の子の手が、温かくて、小さくて、それはもうたまらなく愛おしかった。
「……そっか」と納得した様子で頷いた萩原に「うん!」と女の子が満面の笑みを浮かべる。これが、萩原と幼女の出会いの物語である。