んちゃん、きょうのごはんなあに

「けんちゃぁぁああん!」と走って来た幼女の脇の下に手を入れてふわりと持ち上げる。その場でくるくると回ってからぎゅうっと抱き締めれば、まろい頬が萩原の頬にむぎゅっと押し付けられて、その温かさに萩原の頬が緩む。

「遅くなってごめんね」と眉を下げた萩原に「ううん!だいじょーぶ!おかえりぃ!」ときゃらきゃら笑って萩原にぎゅうぎゅうと抱き着いてくる幼女を抱き締め返して「遅くなってすみません。今日もありがとうございました」と保育園の先生に萩原がお礼を言う。

「せんせーばいばい!」と手を振る幼女を連れて車に乗り込んで「今日は何して遊んだの?」と尋ねれば「あのね、きょうね、のんちゃんとね、」と楽しそうに今日の出来事を幼女が話してくれる。

「けんちゃん、きょうのごはんなあにー」とご機嫌に足をぷらぷら揺らす幼女に「何かリクエストはありますか〜?」と尋ねれば「おむらいす!」と元気よく手を挙げて答えてくれるから「ほんと、オムライス大好きだね」と笑っちゃうけど「けんちゃんのごはんね、ぜんぶすきよ」と両手で口元を抑えながら笑う幼女が可愛すぎて萩原の頬が益々緩む。

「じゃあ今日はオムライスにしよっか」と笑った萩原に「やったぁ!」と幼女が嬉しそうに声を上げる。あれがしたい、これが好き。これはやりたくない、あれが嫌い。そんなワガママも口にしてくれるようになった。

そんなワガママをダメだよ、と叱ることもあって、不満そうに唇を尖らせる姿も、駄々をこねる姿も、萩原にとっては嬉しい成長だった。遠慮の無い、無邪気な子供の姿は、萩原が望んでいた姿だった。

お母さん、お父さん、と泣いて眠れなくなる夜もあるけれど、その度に抱き締めて、背中を撫でて、一緒に夜を明かした。時間を作っては色んな場所に出かけて、思い出を作って、写真を撮った。これから先、大きくなって真実を伝える日がきっとやって来る。

その時に、萩原と過ごした時間や思い出が、心の支えになるように。ずっと一緒にいると、誓った約束を違えるつもりは無いから。この先何があっても、萩原が裏切ることは無いから。「だいすきだよ、香澄ちゃん。おやすみ」と微笑んで、萩原はすやすやと寝息を立てる幼女の額にキスを落とした。
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