幸せにするって、誓うから

「今日は早く帰れるから一緒にご飯食べに行こう」って言ってくれた萩原を待ってたのに、連絡も無ければ帰ってきてもくれなくて。何かあったのかと心配していた香澄ちゃんの元に松田から「ハギが病院に運ばれた」って連絡が来るから泣きながら病院に駆け付けて香澄ちゃんの不安が爆発しちゃう。

ベッドサイドの椅子に座ってぽろぽろ涙を流す香澄ちゃんに「ごめんね、心配させちゃったよね」って萩原が何度目か分からない謝罪をする。けれど香澄ちゃんの涙は止まらないどころか益々溢れてくる。

「ごめんね、香澄ちゃん。泣かないで」って涙を拭おうと伸ばした手をきゅっと掴んだ香澄ちゃんが萩原を見てくしゃりと顔を歪める。「こんなこと思いたくないの、こんなひどいこと、考えてるわたしが一番いや、」って泣く香澄ちゃんの言っている意味が分からなくて萩原が首を傾げる。

「研二くんが大事にしている信念も、誇りも、全部丸ごと好きになるって、決めてたのに」って泣きながら包帯に包まれた萩原の手を両手で握り締める。

「こわいの、研二くんがいなくなったらって…っ、しなないでって、お仕事、いかないでって…ちょっとでも思っちゃう私が、いやなの、ごめんなさい、」ってぼろぼろ泣かれて萩原が唇を噛み締める。嘘でもこの仕事を辞めるなんて言えないし、辞める気も無い。

でもいつだって置いて行かれる側の香澄ちゃんの気持ちを思ったら、萩原の目から涙が零れ落ちた。「そう、だよな…不安に、決まってるよな…ごめん、香澄ちゃんだけを大事にできない俺で、ごめん」って香澄ちゃんの頬に手を当てて静かに言葉を紡ぐ。

もしも、自分が香澄ちゃんの立場だったら?と考えたら耐えられなかった。いつも笑顔で見送ってくれる香澄ちゃんのように、見送れるだろうか。信じて、待つことしかできない日々に、耐えられるだろうか。

胸が締め付けられて、どうしたら香澄ちゃんの不安を取り除けるだろうかと頭を悩ませても答えは見つからなくて。頬を撫でていた手を後頭部に回してそっと抱き寄せる。震える小さな背中をそっと撫でて「結婚、しよう」って小さな声で萩原が呟く。

「…っえ、」って香澄ちゃんの目が見開かれて、涙の粒がぽろりと零れ落ちる。「おれ、この仕事好きなんだ。香澄ちゃんに心配かけちまうって、分かってても、この仕事、辞めたくねぇんだ」って言う萩原に「ちがうの、ごめんなさい…っ、そんなこと言わせたかったわけじゃないの…!」って香澄ちゃんが必死に首を横に振る。

「うん、分かってる。いつもいってらっしゃいって笑顔で見送ってくれて、連絡無しに遅い時間に帰っても笑顔で迎えてくれるでしょ?俺が、香澄ちゃんと同じ立場だったら、絶対仕事辞めて欲しいって言ってるもん」って優しい顔で笑った萩原が香澄ちゃんをぎゅうっともう一度抱き締める。

「香澄ちゃんの優しさに、強さに、甘えてたのは俺だったんだ」って香澄ちゃんを落ち着かせるように萩原がゆっくりと頭を撫でる。「だから、約束させて。絶対、香澄ちゃんの所に帰るって。俺の帰る場所は、ここだけだって、誓わせて」って萩原が言うから、香澄ちゃんの目からぼろぼろと涙が零れる。

「俺と、結婚してください。世界で一番、香澄ちゃんを幸せにするって、誓うから」って優しく微笑んだ萩原に何度も頷く。「うん…っ、うんっ…!もっと、強くなるから…!研二くんが安心してお仕事に行って、帰ってこれる場所をつくるから、」って泣きながら萩原を見つめる香澄ちゃんに萩原がそっと口付ける。

ムードも何もあったもんじゃないけれど、それでもこのプロポーズを生涯後悔する日は来ないと、萩原は確信していた。気を使って席を外していた松田は戻ってくるなり結婚報告をされるから「…いやめでてぇけど何でだよ」って首を傾げるよね。
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