「萩原さんって、そういう欲が無いとか…ありますか…?」って香澄ちゃんに聞かれた松田が「んぐ…っふ、げほっげほっ、はァ!?」って盛大にむせてから「んな事ねぇと思うけど…」って怪訝な顔をすると「じゃあ、私に魅力が無いってことですかね…」って香澄ちゃんが言うから返答に困る。
「…つーか、なんで俺に聞くんだよ。ハギに聞けばいいだろうが」って言う松田に「こ、こんなこと萩原さんに聞けるわけないじゃないですか!」って香澄ちゃんが真っ赤な顔で怒る。
一体俺にそれを聞くのと何が違うんだ、と思いながら「へーへーすんませんでしたぁ」って松田が雑に謝れば「ち、ちなみに…歴代の彼女さんとは…」って香澄ちゃん自ら特大の地雷を踏み抜きに行くから「それ本当に喋っていいのか?」って松田が眉間に皺を寄せながら聞く。
「…あ、あんまり聞きたくはない、ですけど…だ、だってもし萩原さんが、その、そういうのできない人だったら、私が頑張るしかないじゃないですか…!」って真剣な顔で香澄ちゃんが言うから、もう松田は面白くてしょうがない。
本命相手に日和って手が出せなくてもだもだしている間に愛しの彼女様から不能扱いだなんて不憫にもほどがある。許されるなら声を上げて笑ってしまいところだが、目の前でうんうんと唸りながら悩んでいる香澄ちゃんは至極真面目だ。
本気で悩んでいる香澄ちゃんの前で大笑いをする訳にもいかず、松田はポーカーフェイスを貫き通した。「俺も詳しくは知らねぇよ。でも、今までの彼女と普通にそういうことはしてたぜ」ってなるべく言葉を選んでくれた松田に「…やっぱり、そうですよね…」って香澄ちゃんがしょんぼりするから、何て声をかけるべきか迷っちゃう。
散々香澄ちゃんに手出せない無理緊張するって日和りまくってた萩原の姿を知っている手前、下手なことも言えなくて「…別に、お前に魅力がねぇとか、そういうのじゃねぇと思うけど」って当たり障りの無いフォローをするけど香澄ちゃんには逆効果。
「や、やっぱり、私から押し倒すくらいしないとダメですか!?」って言い出した香澄ちゃんに「…ハギにも考えがあんだろ。もうちょっと待ってやれよ」って萩原の名誉のためにもストップをかける。
それからああでもない、こうでもないと言いながらお酒を飲んで寝落ちした香澄ちゃんを横目に萩原に電話をかけて「よぉ、意気地なし」って松田が笑うから「うるせぇよ……」ってがっくり肩を落とす萩原がいる。
今回の松田と香澄ちゃんの飲み会はもともと萩原も入れて三人の予定だったけれど緊急招集がかかって萩原だけ途中離席していたもの。すぐに帰宅せずにこれ幸いと松田に相談を持ち掛けた香澄ちゃんによって長引いていた飲み会だった。
勿論、松田はそれを萩原に伝えていたし、萩原も了承をしていたから心配することなど万に一つも無い。が、松田への相談内容は萩原も予想しておらず頭を抱えるしかなかった。
「マジで、ごめん。陣平ちゃん…」と謝る萩原に「いや?俺としては思ってたよりお前が意気地なしで面白かったぜ。色男が聞いて呆れるな」って松田がけらけら笑う。
後日やたらとすっきりした顔で出勤してきた萩原が「これ、何とは言わないけどお礼ね」ってご機嫌に鼻歌を歌いながら良いとこの洋菓子を渡してきて露骨に嫌そうな顔をする松田がいる。香澄ちゃんは「この間のアレはもういいのかよ」って松田に聞かれてぶわわっと顔を赤くしちゃうよね。